ブロックチェーンを使った
スマートシティ構想
――IOHKとしては、どのような取り組みに注力していますか。
モンゴルのウランバートルで実際にわれわれが着手しているプロジェクトでは、大気の測定にIoTとブロックチェーンを活用しようとしています。ウランバートルの大気汚染は非常に深刻で、特に汚染がひどくなる冬の時期は、人々はマスクをしないと外出しません。小児喘息など、呼吸器官系の病気にかかる子どもたちもいます。
その中で、われわれはIoTデバイスを大量に使用した大気汚染データネットワークのようなものを構築しようとしています。これは非常に実用的かつ応用可能なパイロットになると思っていて、コストを低く抑えながら、国や民間の機関が保有するセンサーなどが相互的な関係性を維持するようなネットワークを構築しようとしています。こうしたことをわれわれのような小企業が取り組んでつくること自体が非常に可能性を秘めていると思います。
これをうまく実用化することができれば、例えば水質汚染やエネルギー消費など、さまざまな種類のセンサーをネットワークに絡めて街全体をセンサーで管理し、さまざまなことを自動化できるスマートシティという構想が見えてきます。こうしたものをある程度確立できれば、中国やタイなど他のアジアの主要都市に対しても展開できるのではないかと考えています。
――そのプロジェクトはどのくらいの期間を見込んでいますか。
まず最初に必要な団体の設置や調査を行い、そこでパイロットを運用するかどうかの決定が行われますが、それが6カ月くらい。今がちょうどそうしたフェーズにあります。
そこからパイロット自体の運用が6カ月から1年くらいかかるものと考えています。最終的にプロジェクト自体の入札から実質的に運用されるレベルまでは短くても3年、長ければもっとかかる見込みです。
Favorite Goods
Master & Dynamicの完全ワイヤレスイヤホンを愛用。「音楽を聴くために買ったが、マイクの質が良いので電話会議でもよく使う」とのこと。年間200日は出張で世界を飛び回るため、オフィス外での仕事のしやすさでも重宝している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
世界でブロックチェーンの可能性を広める
ビットコインと並ぶ、代表的な仮想通貨として知られるイーサリアムの共同創設者であるホスキンソン氏。仮想通貨は今でこそ一般に知られるようになったが、「最初に参加したミートアップは私一人しかいなかった」と、その存在が周知される前から業界に携わってきた。
「(ブロックチェーン技術が)多岐にわたる業界・分野で応用可能なことが、起業家精神やモチベーションを高めてくれた」と、ホスキンソン氏は話す。
だからこそ、「仮想通貨やブロックチェーンが持つ本当のポテンシャルが隠れてしまったのは非常に残念」という言葉に、仮想通貨が単なる投機対象とみなされがちで、置き去りにされた可能性の部分にもっと目を向けてほしいと願う気持ちがにじんで見える。
IOHKを創設した現在は、エチオピアやモンゴルなどさまざまな国や自治体と共にプロジェクトを推進。世界を飛び回っているため、チャットや電話会議を駆使して「スマートフォンとイヤホンだけで会社を経営できる」と笑う。「今が業界として成長の時期」と、ブロックチェーンの新たな可能性を開こうと奔走している。
プロフィール
チャールズ・ホスキンソン
(Charles Hoskinson)
1987年11月生まれ、米コロラド州出身。メトロポリタン州立大学デンバー校、コロラド大学ボルダー校で解析的整数論を学び、その後、暗号化関連の業界に入る。仮想通貨関連のスタートアップ企業のインビクタス・イノベーションやイーサリアムを共同で創業。2015年にIOHKを創設し、CEOを務める。
会社紹介
2015年に香港で創業。米国、英国、日本に主要拠点を置き、ブロックチェーン技術「カルダノ」の開発を手掛ける。従業員数は約160人。19年に本社を香港から米ワイオミング州に移転。