大塚商会・大塚社長も
賛同するEDW
――販売パートナーはスクラムパッケージのビジネスを積極的に手掛けていこうという感じなのでしょうか。
もちろん販売店にも展開していて、約500店が実績を挙げてくれています。通常のアプリケーション販売に比べて売り上げは2倍以上、粗利も1.5倍くらい高い。業種業務特化のパッケージなので、お客様の困りごとに対してサクッと入れることができます。
先ほど申し上げた目標数値で言うと、現状は案件発生率が32%、クロージングまでの平均訪問回数は3.7回といったところです。3回まで短縮できるのが理想ですが、それでも4回以内にはクローズできている。一般の営業マンにこれができるようになるというのは販売店の皆さんにとっても大きな魅力だと思いますし、当社としてもそのための支援を行ってきました。
――最近の新しい動きとしては、「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES(EDW)プラットフォーム」を発表されました。リコーの複合機のほか、他社製を含む多様なエッジデバイスやアプリケーションを連携させる基盤、さらにはコンポーネントの組み合わせにより短時間で容易に独自のワークフローを作成する環境なども提供するというコンセプトですよね。
リコージャパンの売上構成は、ストック系のビジネスを除けば7割はICTなんですよ。EDWプラットフォームは、われわれが得意な主軸の複写機事業と、売上高として大変大きなウェイトを占めているICT事業を融合し、モノをコトに変えてお客様に提供できる価値を上げていくためのものなんです。
今までは、他社の複合機をリコー製のものに入れ替えるというだけの話だったのが、業務ごとにいろいろ提案できるので、提案のチャンスも広がるし、案件の単価も上がるかもしれない。販売店にもそういうチャレンジをしませんかという話を18年はずっとしてきました。19年1月にはEDWプラットフォームに対応した複合機が出ると分かっていましたから、コト売りで複合機を売って儲かるビジネスのための体制を整えていきましょうよと。スクラムパッケージを売れるようになりましょう、というのも同じ文脈の取り組みです。幸いにして、大塚商会の大塚裕司社長をはじめ、多くの仲間のパートナー企業に賛同していただいていますし、EDWプラットフォームで連携できるエッジデバイスやアプリケーションも急ピッチで拡充していきます。日本発のプラットフォームとして成功できるという手応えを感じています。
――リコーのコト売りというのは、複写機の競合から顧客を奪うというよりは、既存の顧客のアップセルを目指すというイメージなのでしょうか。
そもそもマーケティングのあり方が、複写機のマーケティングではなくICTのマーケティングに変わっているんです。だから、競合の複写機ユーザーを取りに行くとか、競合からリコーの複写機ユーザーを守るみたいな発想ではもはやない。まずはスクラムパッケージのマーケティングをベースに、お客様の困りごとの解決にいかに役に立つかを、あらゆる提案のベースにしています。その一環として、複合機の提案が有効な場合もある。
新規開拓でも、スクラムパッケージはお役に立てる内容がはっきりしていて分かりやすいので案件発生率はやはり高いんです。今度の法改正どうしますか、みたいな話から未取引のお客様とも話ができるので、コピーならいらないよと言われても問題ない。EDWプラットフォーム上に対応アプリケーションが増えてくれば、提案の幅はさらに広がります。
――ペーパーレスの流れもありますが、そうするとリコージャパンやリコーは複合機、複写機がなくなることもあり得る前提でICTを中心としたコト売りにシフトするのでしょうか。
それは違います。複写機、複合機はなくならないという前提で考えています。ペーパーレスと言ってもプリントのボリューム減も底を打った感がありますし、ある時、ある場所、ある目的で一番いい手段を人は選択するので、紙の資料を使うのが最適な場面は残ると思っています。だからこそEDWプラットフォームもエッジデバイスとの接続を重視しているし、リコーがオフィスで重要な役割を果たすエッジデバイスのメーカーだからこそ、お客様のビジネス革新に役立てる場面が増えると考えているんです。
Favorite Goods
数あるカメラのコレクションのうち、現役で出番が多いのはやはりリコー製品。APS-Cサイズのセンサーを搭載した高級コンパクトデジタルカメラ「GR III」で撮影した写真をインスタグラムなどで発信している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
カメラ、複写機……専用デバイスへの愛の向こう側
「自分が好きなモノをつくっているメーカーに就職しようと思っていた」という大学時代。写真撮影が趣味だった坂主青年がリコーを選んだのは、カメラメーカーとしてのイメージが強かったからだ。「内定が最初に出たことも大きかったが、母親がリコーを家族的な会社だね、と評したことが決定打だった」と振り返る。
スマートフォンのカメラ機能が飛躍的な進歩を見せる中、専用デバイスとしてのカメラに生きる道はあるかと聞いてみたところ、「カメラにはスマートフォンとは違う写真撮影に特化した操作性など特有の機能がある。万能機にも魅力はあるが、目的に最適な専用デバイスはなくならないものも多いだろう。カメラはそういうものだと思っている。複写機/複合機も存在意義としてはカメラに通ずるものがある」と力を込めた。
ユーザー企業のデジタル変革においても、エッジデバイスの役割はより重要になるという。複写機/複合機とICTの融合をリコーグループの新たな成長の柱とすべく、主導的な役割を果たす覚悟だ。
プロフィール
坂主智弘
(さかぬし ともひろ)
1958年、東京都生まれ。82年、明治学院大学社会学部社会学科を卒業し、リコーに入社。北海道リコー社長、リコージャパン執行役員北海道営業本部本部長、常務執行役員中部営業本部本部長、同関西営業本部本部長、リコーグループ理事、リコージャパン常務執行役員プロダクションプリンティングサービス事業本部事業本部長、同産業ソリューション事業本部事業本部長、専務執行役員 販売事業本部事業本部長兼販売事業本部首都圏地域担当などを経て、2018年4月より現職。
会社紹介
リコーグループの国内販売会社。2010年7月に国内の各地方を担当する7社のリコー販売会社とリコーの販売事業本部を統合して発足。全国354拠点、従業員1万8240人(19年4月1日現在)を擁し、複合機やプリンタをはじめとするICT製品の販売・保守、さらにはシステム開発なども行う。14年7月にはリコーテクノシステムズ、リコービジネスエキスパート、リコーITソリューションズの一部事業を統合し、ソリューションサービスを強化した。