福岡に本社を置く富士通九州システムズは、独自性豊かな商材を数多く開発している。ホテル・旅館向け業務システムやキャッシュレス対応のクラウド型決済サービス、物流業務向け配車支援・運行管理など、いずれもSaaS方式によるサービス型での提供も可能だ。近年では、保守運用の工数が削減できることや災害復旧でメリットが多いことなどが理由となり、SaaS方式での販売が急増。サービス型の商材が利益全体の約4割を占めるまで伸びた。一方で、「顧客の業務をより深く理解するためには、客先でのシステム構築(SI)事業も重要」(石井雄一郎社長)だと位置付ける。個別SIで得たノウハウとサービス商材をビジネスの両翼として伸ばしていく。
SaaS商材が
利益押し上げの原動力に
――富士通九州システムズは、独自性豊かなサービスを多数揃え、サービス型の商材も増えていると聞いています。
当社は富士通グループのSE子会社ですが、ご指摘の通り、独自商材も数多く持っているのが特徴です。近年では、SaaS型のサービス商材を重点的に増やしており、利益面で言えば、すでにサービス商材が利益全体の4割ほどを占めるまで伸びてきています。
例えば、ホテル・旅館向け業務システムは、富士通グループの中で当社が主体的に開発して、全国展開している商材の一つ。30年余りの実績のある業務システムですが、近年ではSaaS型で提供する割合が増えています。従来の客先設置型よりも保守運用の手間が大幅に軽減され、何か災害が起こったときの復旧も早い。とりわけ東日本大震災が発生してからは、SaaS型への移行スピードが明らかに上がりました。
――ほかにはどんなSaaS商材が売れていますか。
クラウド型の決済サービスや、物流業務向けの配車支援・運行管理サービスなどが挙げられます。九州地区は、中国をはじめとする訪日外国人でとても賑わっていることもあり、流通小売業はキャッシュレス・サービスへの対応ニーズが大きい。当社のクラウド型決済サービスは、海外で主流になっているキャッシュレスにも対応したサービスで、引き合いが増えている商材です。流通小売業が活況となれば、物流サービスも刺激されますので、貨物車の配車支援や運行管理系サービスの需要も増える構図となっています。
――富士通九州システムズのプロパー役員だった愛川(義政・元取締役)さんは、その手腕が評価されるかたちで、富士通クラウドテクノロジーズの社長に抜擢されています。独自の立ち位置ですよね。
私は昨年10月に、富士通九州システムズの社長に就いたのですが、確かに独自性を重視する社風だと感じています。売上構成比で見ても、富士通のSE子会社でありながら、富士通九州システムズ独自のビジネスが半分近くを占める。富士通が大手ユーザー企業を中心に手掛けているのに対して、当社は九州地場の中堅・中小企業の顧客を多く持たせてもらっています。販売力がある富士通マーケティング(FJM)と連携することもあります。
個別SIとSaaS商材に
相関関係あり
――特色ある商材をより増やしていくために、今後はどんな施策を打ちますか。
新しい商材は、意識的につくりあげていく必要があります。愛川さんをはじめ歴代の経営陣もそうしてきたように、私も新商材を戦略的に生み出せるよう経営の舵取りをしています。具体的には、商材・サービス開発を専門とする部門が中心となり、福岡の中心地にある官民共働型スタートアップ支援施設や、東京・銀座にある同様の施設に人員を配置して、情報収集に当たっています。そうした施設には、新しい技術を持つスタートアップ企業が多く集まっていますので、新規ビジネスのヒントや人脈づくりに大いに役立ちます。
――SE会社として、SIビジネスについてはどうですか。
SIビジネスは、富士通のSE子会社としての仕事と、当社が独自に受注したり、FJMが営業を行い当社がSIを担当するなどの形態があります。富士通との連携ビジネスでは、東京・蒲田のオフィスには全社員の3割近くに相当する300人体制で開発要員を配置しており、九州でも開発できる案件であれば、こちらに持ってきて開発するケースも少なくありません。
一見すると、当社独自のSaaS商材などの開発と個別SIのプロジェクトは関連性がないように思われるかも知れませんが、会社としてのノウハウの蓄積という意味では、両者の間にはとても密接な関係があります。企業向けのシステムビジネスは、業種・業態の業務を知っていることが大切です。個別SIの仕事を通じて得た経験やノウハウが、独自商材の開発に役立つことは間違いありません。個別SIと独自商材のバランスを上手く保つことが、競争力を高めていく上でとても重要なのです。
――SIだけではダメということでしょうか。
当社側の人的リソースと、ユーザー企業のIT予算や時間が無尽蔵にあれば、全て個別SIでいいと思いますよ。でも、実際はどのSIerも優秀な人材の確保に苦労していますし、ユーザー企業も限られた予算と時間の中で、投資対効果の最大化を目指しているわけです。当社独自のユーザー企業は、中堅・中小規模が多いため、パッケージやSaaS型のシステムが適応可能であれば、できるだけ既存のものを使い、どうしても個別で開発しなければならないところをSIで行うのが理想です。このあたりのバランス感覚も、SIerとしてのノウハウがなければ、うまくできません。
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