昨年3月、東洋ビジネスエンジニアリング(当時)の株主構成が大きく変わるというニュースが飛び込んできた。もともとの親会社である東洋エンジニアリングや大株主だった野村総合研究所が同社株を全株売却し、資本関係を解消。東洋エンジニアリングの産業システム事業本部が独立して発足した同社の設立20周年の節目である今年、社名から「東洋」の冠も外し、「ビジネスエンジニアリング株式会社」として新たなスタートを切った。新社名に込めた思いと、事業展開について聞いた。
果たすべき役割はますます大きく
――今年10月に、いよいよ新社名のビジネスエンジニアリングとして営業を開始されました。
東洋エンジニアリングとの資本関係もなくなり、いろいろと新社名は考えたのですが、結局は現在のかたちに落ち着きました。「東洋」が取れただけじゃないかという声もあるかもしれませんが(笑)。僕らのサービス内容、これまでお客様に提供してきた価値というのは、「ビジネスをエンジニアリングする」ということなんですね。これは変わらないので、そのままいこうと。略称もB-EN-Gのままです。
むしろ、設立から20年経って原点に立ち返って考えてみると、ビジネスをエンジニアリングするというのは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代に求められていることそのもののような気もしますしね。いい社名ですよね(笑)。
――B-EN-GというとSAPの国内初のパートナーというイメージが強い人も多いのでは。
そう、当社はERPからスタートしたんです。まだSAPの日本法人がないときにドイツに行って探ったところからスタートしたんですが、志の高いお客様とともにERPのB-EN-Gということでビジネスを拡大できました。
ただ、いまではそこからビジネスの幅がだいぶ広がってきています。今一番注力しているのは、IoTですね。製造業向けのIoTソリューションを、「ものづくりデジタライゼーション」というコンセプトで提供しています。まさに製造業のお客様のDXに貢献していきたいという思いはすごく強いです。
――製造業を取り巻く環境も激動という感じですよね。
DXというのは、先進のITを活用し、時には企業文化・風土の変革まで踏み込んで、事業環境の変化に適応しつつ競争力を維持・向上させていくことですよね。その意味で、製造業は米中貿易戦争やBrexitなどの動きを注視する必要があるんです。製造業はどんどんグローバルな産業になっていますから、地政学的なリスクに対応してサプライチェーンを都度最適化していかなければならない。日本企業のそうした取り組みをしっかりサポートできる存在が必要なんですね。製造業のグローバルビジネスを長年支援してきた当社の果たすべき役割は、従来以上に大きくなっていると自負しています。
市場の成長以上のスピードで成長
――19年3月期の通期決算は、受注高、売上高、営業利益全てが過去最高でした。20年3月期の上期も、全社売上高、利益、さらには主力のパッケージ製品である「mcframe」のライセンス売上高も上期過去最高を更新しています。まさに絶好調という感じでしょうか。
当社が飛びぬけて好調というよりは、マーケット全体の動きから、これくらいはやらないと、という状況ではありますよね。BtoBのITサービスは、どこも5%~10%は成長していますが、それよりも成長していて、売上高の伸び率が20%を超えていますから、それは手応えを感じています。先ほど申し上げましたが、日本の製造業が海外でビジネスを拡大していくときにどうすればいいのかというところにソリューションを持っていることが、時代にフィットしているということかなとは思っていますが。
――具体的にはどんなビジネスが特に伸びているんでしょうか。
ブレークダウンすると、SAPなどのパッケージ製品をベースにしたSIの「ソリューション事業」がすごく伸びましたね。SAPは25年のERP旧製品サポート切れ問題がありますから、最新ERPであるS/4HANAへのマイグレーション案件は当然ありますし、調達・購買、サプライチェーンの支出管理ソリューションであるAribaも伸びましたね。一番大きいのはMES(製造実行管理システム)のアプリソです。SAPとの相性がいいというのもあって、基幹系ができると、その外にも投資が広がっていく感じです。あとは、グローバルで複数拠点のデータを統合管理していくためにインフォマティカのデータ統合管理ツールの需要なども増えています。
――パッケージソフトのライセンサーとしてのビジネスはいかがですか。
これは引き続き好調なのですが、海外向けERPパッケージの「mcframe GA」(旧A.S.I.A.)のSaaS版だったり、mcframe GAを利用した海外進出企業支援のアウトソーシングサービスなど、クラウドを活用したものが特に評価していただいています。
――海外拠点の活動状況は?
この20年間で、海外に5つの現地法人を整備しましたが、これは本当に当社の海外ビジネスにおいて重要な基盤になっています。5法人とも順調で、期初の目標も順調にクリアしているという状況です。
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