パートナーエコシステムの
拡大にも注力
――税理士・会計事務所パートナーである認定アドバイザーも7300事務所を超えました。
最近だと「マジ価値コミュニティ」という、ITコンサル的なことまでできるようになってきているようなイノベーティブな会計事務所さんがコミュニティ化していて、東京、大阪、名古屋、福岡、札幌とどんどん全国各地に広がってきています。freeeのビジネスそのもののギアが変わってきた要因になっています。
――上場直前の12月初旬には、プラン改定で「10倍値上げ」とSNSで情報が拡散し炎上気味になりました。実際はそれまで下位プランで使えた特定機能が上位プランでしか使えなくなるということでしたが。
変更案を流して、パートナーコミュニティやユーザーの意見を取り入れて最終判断をするという過程で、コミュニケーション上の問題が起きてしまったということだと理解しています。
それぞれのプランには、想定しているユーザーのペルソナ、顧客層というのがあります。それを基にプランごとの機能を設定しているわけですが、各機能の使われ方を追っていくと、想定通りに使われていないケースがある。そういう機能は適切な料金体系のところに移してあげたほうが私たちとしても開発しやすくなりますし、結果としてユーザーにメリットを還元できるわけです。これはある程度定期的に見直してやっていかないと、逆に使い勝手がいいはずの機能が育たなくなっていったりして、プラットフォーム全体の価値の向上に寄与できなくなってしまう。
最終的な変更内容は単純に下のプランから機能が消えただけではなく、下のプランに追加された機能もあります。全体から見たときにプランの価値が変わったのかというとそうではないと思っていますし、あくまでもそれぞれのペルソナに合った使い方がされるように最適化した形です。
――これも最初はコアな認定アドバイザーからの問題提起でしたよね。
コミュニティが活性化していることの表れだとも思っています。だからこそ、パートナーコミュニティとのコミュニケーションの仕方も、今までとは変えていかなければいけないということだったんだろうと思います。
――法人向けビジネスを伸ばすという観点では、チャネルの拡充も考えていますか。
SIerなどがfreeeを顧客に紹介してくれるケースは増えています。特に、セールスフォース・ドットコムやサイボウズの「kintone」のエコシステムの中で、それらと連携するソリューションとしてfreeeを評価していただく場面が増えています。SIerや事務機・IT製品の販社の方々を対象とした再販を含むパートナープログラムも今後整備していきます。当社のオープンプラットフォーム戦略はサードパーティーのみなさんが価値を提供しやすいスキームでもありますし、中堅企業向けの製品・サービスは、価格帯的にもSIerなどのビジネスにマッチしたものを出しています。パートナー戦略に関する新しい施策もどんどん打っていく方針です。
Favorite
Goods
上場記念で作成したTシャツ。通常の「freee Tシャツ」と比べるとアニバーサリー感のあるデザインだ。数字は同社の証券コード。海外の投資家が証券コードで企業を呼ぶことを意識した。
眼光紙背 ~取材を終えて~
“クラウドCFO”が活躍する世界へ
「本業さえ持っていれば、誰でもビジネスを強くスマートに育てられるプラットフォームをつくっていきたい」。佐々木CEOの究極の目的はそこにあるという。
そのためのプロセスとして、社内業務の自動化と経営の可視化を進め、企業間取引の事務コストも極小化していく。クラウド化とAPI公開によるオープンプラットフォーム戦略でいろいろなサービスと連携することで、「意思決定さえすれば業務が自動で回る環境」を実現しようとしているのが現在のフェーズだ。
その先には、「蓄積されたデータを活用すれば、意思決定すら、いろいろな提案が自動で受けられるようになる。もっと言えば、“クラウドCFO”のような機能がfreeeのプラットフォームに組み込まれ、資金繰りなどの課題を自動で意思決定して解決してしまうような世界をつくっていきたい」と話す。
IPOは、まだ夢の途中。夢を実現するにはまだまだ長い時間がかかることは分かっているが、地に足を着けて追いかけていく。
プロフィール
佐々木大輔
(ささき だいすけ)
東京都生まれ。一橋大学商学部卒。データサイエンス専攻。派遣留学生として、ストックホルム経済大学にも在籍。大学在学中からインターネットリサーチ会社でリサーチ集計システムや新しいマーケティングリサーチ手法の開発を手掛ける。卒業後は、博報堂などを経て、2008年、Googleに参画。日本市場のマーケティング戦略立案や日本、アジア・パシフィック地域の中小企業向けマーケティング統括を担当した。12年、freeeを創業。
会社紹介
2012年7月設立(当時の社名はCFO)。自動仕訳などの「全自動帳簿作成機能」を売りにしたクラウド会計ソフトを開発・提供している。資本金は161億603万円。従業員数は約500人。19年12月に東証マザーズに上場。