協業を通じて
競争力を高める
――ハイタッチ営業を強化するに当たり、具体的にはどのような取り組みをされておられますか。
取り組みの一つが北九州市に本社を置くYE DIGITAL(旧安川情報システム)と昨年12月に行った業務提携です。YE DIGITALはグローバル製造業の業務的な知見が豊富で、これに当社のデータ連携の技術を組み合わせることで新しい商材開発を共同で行っています。基幹系から情報系までユーザー企業の業務システム全般の提案やシステム構築に長けているYE DIGITALとの協業を通じて、ユーザー企業に向けたハイタッチ営業のノウハウも学び取っていく考えです。
データ連携という文脈では、昨年11月に帳票管理基盤の開発で有名なウイングアーク1stと提携し、紙文書やファックスといったアナログ文書による商取引をデジタル化し、取引業務の自動化に取り組んでいます。コロナ禍で対人距離の確保が求められる中、「会社に来ないとできない業務」が問題になりましたよね。紙文書やファックスの取り扱いや、企業のデータも職場内だけでなく、在宅勤務を行う従業員の自宅からでもアクセスできなければならない。Apexではさまざまな知見やノウハウを持つ企業と協業しながら、データ連携基盤ベンダーとしての競争力を一層高めていきます。
――データ連携ソフトは他社も開発していますが、最大の違いはなんでしょう。
EDIやデータ連携など個々の機能を提供するソフトを複数組み合わせれば、Apexと同じような環境を構築すること自体は可能です。ただ、それではコスト高になったり、運用が複雑になったりしますし、なによりデータの流れを一元的に可視化、管理することが難しくなってしまいます。Apexであれば分散ワークも含めた企業内のデータの流れを統合的に管理でき、また連携に必要なデータの変換や加工は当社製品の「RACCOON」が担うことで、手間のかかるプログラミングなしで社内から企業間取引に至るまでシームレスなデータのやりとりが可能になります。
――安原社長はコロナ禍の最中の4月1日付でトップに就任されました。大変な時期でしたので、相当な逆風ではなかったでしょうか。
今年2月に社長交代を発表して、ほぼ同じ時期に本社オフィスを東京駅からほど近い一等地に移転しました。新オフィスは「こんなオフィスで働きたい」という理想を詰め込んだもので、優秀な人材獲得にも有利になるよう気合いを入れたのですが、社長に就任したときは緊急事態宣言の最中で出社した人はほぼいない状態(苦笑)。正直、複雑な気持ちになりましたが、働き方が大きく変わるときは、データ連携がより重要になります。変化はチャンスと捉えてビジネスの拡大につなげていきます。
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富士通クライアントコンピューティングの電子ペーパー「クアデルノ」。ガジェット好きで「ネットで見てその場で発注した」と一目惚れ。「鉛筆のような書き味で、毎日使っても電池は一週間くらい持つ」とお気に入りの様子だ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
挑戦するのに躊躇はしない
安原社長が初めて外資系企業に転職した90年代のこと。本国は直販指向だが、日本法人はSIer経由の間接販売が多くを占めていた。市場特性の違いからくる方向性の違いで、外資系によく見られる構図。本国の指示と国内の市場ニーズの両方に応える策として立案したのが「直販部隊は販売パートナーと競合しない超大型案件を狙っていく」というものだった。
ただ、それだけでは営業マンのモチベーションが高まらない。そこで、大手企業の向こう5年間のIT投資の計画を調べ上げ、そのロードマップに自分たちの製品を当てはめ、受注の内々定をもらった時点でインセンティブを出すことにした。受注確定後には追加の報酬もある。販売パートナーと棲み分けつつ、直販の売り上げも伸ばす一挙両得の施策だ。
当時、オープン化と水平分業が急速に進み、IT業界は大きく変化していた。「先人の知恵はもちろん参考にするが、新しいことを始めるに当たって躊躇することはない。市場は常に変化しているのだから」。コロナ・ショックで新しい生活様式、働き方に変わる今のタイミングで社長に就いたのは宿命だったと捉え、「思いついたことは何でも挑戦していく」気構えで経営に臨む。
プロフィール
安原武志
(やすはら たけし)
1966年、兵庫県生まれ。89年、大阪工業大学工学部経営工学科卒業。同年、日商エレクトロニクス入社。95年、日本オラクル入社。2009年、データ・アプリケーション入社。営業本部長。10年、執行役員営業本部長。15年、取締役。20年4月1日、代表取締役社長執行役員に就任。
会社紹介
データ・アプリケーション(DAL)は企業間の受発注業務を自動化するEDI(電子データ交換)ソフト開発大手。昨年度(2020年3月期)の連結売上高は前年度比7.2%減の21億円。営業利益は同45.0%減の3億6500万円。22年3月期までの3カ年中期経営計画では売上高30億円、営業利益率30%を目指していたが、コロナ・ショックの影響を踏まえ、6月22日付けで一旦取り下げることを決めた。