新型コロナウイルスの感染拡大により、ERP市場でもクラウドシフトの機運が高まっている。SaaS型ERP「Infor CloudSuite」を提供するインフォアジャパンのSaaSビジネスは高い成長率で推移している。昨年11月に副社長から再び社長に就任した三浦信哉氏に、現在のビジネスの状況や今後の戦略を聞いた。
SaaSの成長率向上が最優先
クラウドシフトを加速させる
――昨年11月に社長に再任されました。この経緯は珍しいことだと思いますが、ご自身ではどのように捉えていますか。
もともと副社長という立場ではありましたが、コロナ禍の影響もあって前社長が日本にいられないことがあり、社長の代理のような形で今と同じようなことを任されてやってきていました。結果として期待されていた成長を実現できたということもあり、そのあたりを評価されての再指名かなと理解しています。こういうポジションで仕事をさせてもらうことをうれしく思うとともに、肩書きが違うことで感じる緊張感や重責も理解していますので、これまでの取り組みは継続しつつ、次の成長のためにどうしたらいいかということをより真剣に考えていかなければいけないなというのが正直な感想ですね。
――副社長から社長に肩書が変わっても、インフォアジャパンの魅力についての認識に変化はありませんか。
最初に入社したときは、成長の余地がたくさんある会社だなと感じていました。実際に営業の責任者や一度めの社長在任時も、成長を感じることができていましたし、自分が打った手に対する結果というものが感じられる状況が続いてました。社長から副社長になったときもまだまだ成長の余地があると考えていたので、そこで辞めるという選択肢は考えませんでしたね。
――21年度(21年1月~12月)の経営方針説明会で、23年度までに売り上げで50%の成長を目指す計画を示されました。さらに商材別ではSaaSを8割、販売チャネルでは間接販売を30%にするということも示していました。これらの目標について、詳しく説明していただけますか。
50%の成長は、SaaSとオンプレミスを合わせた売り上げの目標です。米国本社から期待されている部分は、やはりSaaSの成長率を高めていくということですね。これが最優先になります。SaaSの成長率を高める上では、新規のお客様の取り込みと、既存のお客様のクラウドシフトが非常に重要になってきます。50%の成長は遂げたけれども、SaaSの成長がそこまで追いついていないということでは志半ばかなと思っています。説明会ではSaaSの売上比率8割をミニマムのゴールだと申し上げましたが、今年度の目標が約7割と定められているので、23年度までの目標はもっと高くてもいいかもしれません。
間接販売については、昨年の比率は21%でした。2年前に中堅企業向けのERPビジネスをパートナーに開放すると宣言してから、継続的に間接販売の比率が増えていますが、パートナー経由のSaaS販売は数%と限定的です。パートナーもSaaSの需要の高まりは認識し、避けて通れないことは十分に理解されているので、これからは実行できる能力をいかに高め、導入の経験をつくっていけるかがカギになるとみています。
――20年度のビジネスはどのような状況だったのでしょうか。
比率としてはSaaSの売り上げは約6割で、期待値以上の結果だと捉えています。前年と比較すると倍以上の成長率で推移しました。グローバルの中でも日本は最も早い成長を遂げている地域と認識され、それに伴っていろいろな投資をしてもらえている状況になっています。一方、オンプレミスは若干のマイナス成長となりましたが、それを考慮しても合計の成長率は37%を達成しています。グローバルで見た場合、日本のSaaS製品の成長率は低くないと理解していますが、SaaSの売上比率が約6割という数字を見ると、早い段階からクラウドの成長をしてきた米国や欧州、そしてアジアパシフィックでは、もっと高い数字になっている国はあり、そこにはまだ追いつけていません。
われわれはほぼ100%クラウドで提案していますので、オンプレミスで提案してくるケースがまだある競合ベンダーと比べると、クラウドシフトが進んでいると感じています。
――クラウドが伸びた要因としてコロナ禍の影響もあると思いますが、このあたりについてはどのようにお考えですか。
最初の緊急事態宣言で、リモートワークを余儀なくされた企業から、クラウドに対する問い合わせが増えたのは間違いありません。あとはオンプレミスでビジネスアプリケーションの構築を望んでいた既存のお客様が、クラウドを視野に入れ始めたり、クラウドを前提とした検討を始めたりしました。これはわれわれにとってポジティブな変化だと認識しています。ビジネスとしてはネガティブに働く可能性があると身構えていましたが、コロナ禍でクラウドシフトの必然性を感じる方向にがらりと変わりましたね。われわれは昨年、一昨年から地道にクラウドと言い続けていますので、そういった活動も成長できた一つの要因かなと思っています。
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