エンタープライズ市場は
エッジからフットプリントをつくる
――製品についての特徴や、競合ベンダーの製品と比較した場合の強みについてはどのようにお考えですか。
日本では、コアのERP製品と、エッジと呼ばれる周辺のビジネスアプリの二段構えで提供しています。コアの製品では、主にプロセス製造業向けのInfor M3と大規模組立製造業向けのInfor LNをベースとした各CloudSuiteソリューションが売り上げの核となっています。この周辺には各エッジソリューションがあり、例えば分析系のソリューションはCloudSuiteにバンドルされて提供しているので、CloudSuiteの導入が増えれば必然的に伸びるというようになっています。あとはチャネルパートナーやSMBマーケット向けの「SyteLine」をベースとしたビジネスですね。
ERPの市場では、われわれの競合ベンダーは非常に大きなマーケットシェアを持っており、いきなりコアの製品で戦いを仕掛けても、なかなか勝負になりません。そのため、エンタープライズのマーケットに関しては、エッジから自分たちのフットプリントをつくっていくという戦略を取るケースが多いですね。
それから、日本で販売している全てのエッジソリューションに関しては、マルチテナントのクラウドで提供できるようになっています。各産業向けのCloudSuiteソリューションとエッジソリューションがインテグレートされていて、ワンストップで提供できる点が競合ベンダーの製品との大きな差異化ポイントになっています。あとは標準で広くカバーできるソリューション群を提供する方針を取っているので、競合ベンダーに比べてカバレッジが広い部分も強みになっています。
CloudSuiteソリューションについては、各業種でキーになるお客様の実績ができてきています。今年前半に、全部で10以上のプロジェクトが本番環境の稼働を迎えるので、それが進めば、エッジだけでなく、コアの製品でも競合ベンダーと正面から勝負していけるようになると期待しています。いずれにしても、どういう切り口であっても競争力のある製品を揃えることができつつあります。
――クラウドを前提とした市場をつくっていくために、どのような施策を展開していくお考えですか。
日本の市場は、前例があるか、あるいは実績があるかということに非常にこだわりが強いのが特徴です。今、走っているプロジェクトをきちんと進め、これだけトランスフォーメーションができているということをメッセージとして伝えていくことがまずは重要かなと思っています。
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社長に再任する前の営業統括に従事していた際、日本法人の目標を達成した記念として米国の本社から贈られたカルティエのボールペン。験を担ぐ意味もあり、重要な署名の際に利用している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「同じ」では未来はない
三浦社長は、2017年の一度目の社長就任時と比較して、事業環境の変化のスピードが速くなっていると実感する。それ故「同じことをやっていては、来年、再来年はないという危機感を持っている」と気を引き締める。
17年はインフォアにとっては「マルチテナントクラウド元年」の位置づけだった。その後、SaaSの需要が高まり、国内の売り上げに占めるSaaSの割合がオンプレミス製品を逆転。現在はSaaSビジネスの割合を8割まで引き上げることを目指している。
大切にしているのは「できない理由を考えるのではなく、どうすれば実現できるのかを常に考える姿勢」で、これが「ここ2、3年のインフォアジャパンの成長の根本にあり、今後の成長を考える上でも重要になる」と話す。
景気の停滞や災害、そしてコロナ禍といった予期せぬことが世界中で起こり、変化への対応がより重要視される中、社内文化の醸成を含めた自社の変革も進め、勝負に挑む考えだ。
プロフィール
三浦信哉
(みうら しんや)
2000年以降、日本パラメトリック・テクノロジー(現PTCジャパン)、EMCジャパン(現デル・テクノロジーズ)、ソフトウェア・エー・ジーの営業部門で、製造業をはじめとした日本の特定業種のビジネス変革を支援。その後、14年にダッソー・システムズのセールスディレクターに就き、医療や消費財、造船、エネルギーといった新規業種の開発を統括。16年、インフォアジャパンに営業本部長として入社、17年に代表取締役社長に就任。副社長執行役員営業統括を経て、20年11月より現職に再任。
会社紹介
2002年設立。本社を米ニューヨーク州に設ける。SaaS型ERP「Infor CloudSuite」を中心に、あらゆる業界に特化したビジネスクラウドソフトウェアを、世界175カ所、6万7000社以上に展開。各業界における深い知見やデータに基づき、新ビジネスの創造を支援し、業界特有の課題を解決している。20年2月に米Koch Industriesによる買収が発表され、20年4月に買収が完了した。グローバルでの従業員数は約1万7000人。