ファイナンスやマーケティングを主力とするメタップスは今年3月、SaaS一元管理ツール「メタップスクラウド」の提供を正式に開始した。SaaSの利用は今後も拡大を続ける見通しで、山崎祐一郎社長は、SaaS管理の市場を「完全にブルーオーシャン」とみる。連携SaaS数を着実に増やし、新機能の拡充を進めるメタップスクラウドは、同社にとっては「5年後を見据えたプロダクト」との位置づけだ。
(取材・文/齋藤秀平  写真/大星直輝)

自社の「てんやわんや」が起点

――2018年11月の社長就任から丸3年となりました。これまでのビジネスの状況を振り返っていただけますか。

 社長に就任したころは、会社としては転換期でした。20くらいの事業をやっていましたが、方向性を絞って事業をやっていこうということで、それまでのBtoCの事業は全部売却・撤退、海外事業も縮小し、BtoBの領域にフォーカスすることを決めました。当時はマーケティング事業がメインで、お客様のほとんどはゲーム会社でした。いわゆるソーシャルゲームバブルのころに一気に伸びてきた事業でしたが、各ゲーム会社が広告予算を含めて投資を絞り出したという変化があったので、われわれとしても国内の決済事業に寄せていこうという方針を立てていました。そういった時に新型コロナウイルスの感染が拡大し、先行きが不透明な状況になったので、コア事業であるファイナンスとマーケティングについては国内に絞り、中長期で投資ができるメタップスクラウドを新しいサービスとして立ち上げ、事業の方向性をこの3本に絞るという方針を明確にしました。

――メタップスクラウドは中長期で投資できる事業ということですが、リリースの理由や背景をもう少し詳しく教えてください。

 われわれ自身が相当な数のSaaSを使っていたことが起点になっています。メタップスグループでは、おそらく200近くのSaaSを使っている状況で、IT部門のメンバーがてんやわんやな状態となっていました。特にコロナ禍では、リモートワークが多くなり、「あれに入れない」とか「このPCからログインできない」といった問い合わせがたくさんありました。そういう状況を見て、これはニーズがありそうだと考えました。ただ、われわれだけの問題かもしれませんでしたので、大手企業を含めて30社ぐらいの情報システム部門の方々に協力してもらい、インタビューをしてからプロジェクトをスタートさせました。

――主力とするファイナンスやマーケティングとは少し方向性が違う製品ですが、これまでの知見はどのように生かしているのでしょうか。

 以前、われわれはアプリの分析・解析ツールを出していました。これは、複数タイトルのゲームアプリを出しているゲーム会社が、それぞれのアプリの中身の分析結果を横軸で比較できるようなツールです。メタップスクラウドは、一つのプラットフォーム上でまとめてSaaSを管理できるプロダクトと位置づけているので、概念としてはアプリの分析・解析ツールと近いところがあります。

――開発の面ではいかがでしょうか。

 われわれが把握している限りでは、国内で1000以上のSaaSがあり、グローバルでは国内分を除いて3000超あるとみています。メタップスクラウドと連携するのに必要なAPIはSaaSごとに細かく分かれているので、開発は相当地道な作業になります。ただ、中長期でそれをやることによって、差別化が図れると思っています。アプリの分析・解析ツールでは、アプリとの連携は土管工事のように一つずつ対応していました。そういったことから、われわれはシステム連携を非常に得意としており、開発の面では当時の経験を生かすことができています。もう一つは、グーグルに売却したモバイル金融サービス「pring(プリン)」のノウハウもあります。プリンは、日本全国の地銀やメガバンクの銀行APIを接続することによって、リアルタイムの入出金ができるサービスです。銀行の口座接続を含めた外部システムとの連携は非常に重要で、メタップスクラウドの開発に似ている部分があります。

 実は開発メンバーは、元々はマーケティング事業の開発を担当していました。そこに退職者にも集まってもらってチームを結成しました。エンジニアはプロダクトを見てキャリアチェンジをすることが多いので、エンジニアから見ても、メタップスクラウドは面白いプロダクトになっていると思っています。