最薄・最軽量のモバイルノート「Mebius MURAMASA(メビウス ムラマサ)」によって昨年のモバイルノート市場をけん引したのがシャープである。ユーザー層の拡大に対応して品揃えを増やしてきた従来路線から脱却。市場の半歩先を行くシャープならではの製品に集中することによって新市場を切り開いた。今年も深く鋭く市場を切り取れるかどうか。誰にも正確には読みきれない薄型・軽量ノートの行き着く先について、シャープは今年、どのような影響を与えるのか。

 メビウス ムラマサのスタートは、「各社横並び傾向が強いノートパソコン分野で、シャープならではの商品の実現は可能か」という問い直しにあった。パーツを組み合わせるモジュール型の水平ビジネスが日本でも定着。技術力と商品力とが必ずしも一致しない状況のなかで、自身で個性を語りかけることのできる商品を実現する。これがムラマサであった。

 薄型・軽量のモバイルノートが高度な技術の蓄積によるものであることは知られている。相反する多くの技術要素のなかから何を優先するかの選択が商品の個性を決定する。

 「ある要素を伸ばしつつ、それに相反する要素を犠牲にしなくてすむ技術開発は可能。この技術開発によってノートパソコンは次の時代へ進む」と語るのは、シャープ情報システム事業本部パソコン事業部・川森基次事業部長。

 つまり、技術革新が商品の差別化につながる分野がモバイルノートとの判断により、メビウス ムラマサを核としたモバイルノートへの集中を開始した。

 昨年のパソコン需要の60%を占めると言われるノートのなかで、モバイルノートの比率はまだ低い。電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、ノートパソコン市場は2003年にようやく150万台の市場規模になるとの予測だ。一方、「その倍の300万台は堅い」というのがノートパソコンを推進するシャープの見方である。

 その根拠は、「移動体通信網におけるデータ通信インフラが確立しつつある。すでに急速な普及を見せているモバイル常時接続が今後さらに一般化する」という点。

 ノートパソコンがマニア層を中心とした需要から一気にユーザー層を拡大すると予測する。しかも、ノートパソコンは、省スペース型のオールインワンノートとモバイルノートへの2極分化がさらに進むとの見方である。

 「メビウス ムラマサ」ユーザーの主力が、デスクトップとオールインワンノートをもっているビジネスマンであることが、この予測を裏付けている。

 モバイルノート分野では、PDAおよび携帯電話との関係がユーザーの大きな関心事である。

 昨年のモバイルノートとPDAの関係については、「市場での重なり合いが深まると見られたにもかかわらず、結果的にモバイルノートとPDAの壁は大きかった」と総括する。

 ユーザーが重なり合いながらも、商品としては融合する方向には向かっていないとの判断で、「今年は両ジャンルの接点が大きな注目を集め、その摩擦のなかから生まれる新商品に期待できる」としている。

 また次世代携帯電話との関連については、「現在市場に出ている携帯電話であろうと、次世代携帯電話であろうと、電話は電話。技術的に高度な機能を追加することは可能だが、リアルタイムにお互いが話し合える共時性が電話の最大のメリットである事実は変わらない。この本質からずれた展開での実用普及は難しい」と判断する。

 パソコン不況からの脱却が期待される02年について、「世界規模で生産革命が起こっている。これにどのように対応するかが課題。経済不況とは必ずしも連動しない要素が多く、不況が終わっても生産革命は終わらない。今年はさらに気を引き締めて臨みたい」としている。