【ソウル発】韓国では最近、インターネットで行われているサイバー暴力が深刻な社会問題として注目されている。匿名のネチズン(インターネット上の市民)たちがネット掲示板に載せる文や写真が個人の人権を侵害したり、政府の政策を左右するなどのケースがよく発生しているからだ。

 こうしたサイバー暴力の危険は日常的に潜んでいる。例えば、ある人が否定的なニュースの対象になれば、多くのネチズンたちがその人に関連する新しいニュースをつくり出す。その人の実名が公開され、写真がインターネットに出回り、個人情報や家族関係などまで公開され“世論裁判”が始まるのだ。

 インターネットによる魔女狩りという点から、マッカーシズムをもじって「ネカシズム(ネティズン+マッカーシズム)」という造語まで登場した。政党の掲示板や政策関連サイトでも一部のネティズンたちが匿名という点を悪用し世論を誘導する場面が度々ある。

 サイバー暴力解決のため、ようやく政府も対策に積極的になりはじめた。情報通信部は10月までにサイバー暴力行為に対する処罰を強化する内容を盛り込んだ法律と制度の改善案を用意するため、タスクフォースチームを編成し、この問題に対して積極的な検討に入った。

 最も有力視されている方法はインターネット実名制だ。ネット掲示板に書き込む時は、必ず本人認証をしてから参加できるようにするというものだ。インターネットの最も大きな問題であるサイバー暴力は、まさに匿名性から生まれているからだ。

 インターネット実名制は憲法に保障された表現の自由を制限するという点で、これまでは導入に関して賛否の議論が絶えなかった。一部の市民団体と学界は、匿名性がサイバー暴力の主な原因ではなく、行き過ぎた個人の情報の過大な要求がその要因であるとしている。ネチズンもこの制度に対して長い間反対をしてきた。

 しかし、最近は状況がかなり変わっている。サイバー暴力の深刻度が増すに従って、ネチズンたちもインターネット実名制への認識が変化しているようだ。

 各ポータルサイトでは、ネチズンを対象に調査を実施。その調査結果は、ネチズンの意識の変化を反映している。ヤフーコリアの調査によると、インターネット実名制に対する賛成意見が80%、反対19%だった。ポータルサイト「NAVER」でも賛成65%、反対32%と賛成意見が圧倒的に多かった。

 一方、インターネット実名制が導入された場合、①すべてのインターネットサービスに対して実名を使う方法、②掲示板に限り実名を利用する方法、③運営者にだけ実名が公開され、一般利用者には実名の代わりにIDを表示する方法、④実名の掲示板と匿名の掲示板を別々に運営する──などの方法が論議されている。
鄭載学(ジョン・ジェハク=BCNソウル特約記者)