富士ゼロックス(山本忠人社長)は、必要な時に必要な部数を印刷する「POD(プリント・オン・デマンド)」を中心に、企業向けマーケティング戦略など付加価値を組み合わせた「プロダクションサービス事業」を拡大している。銀行やカード会社など、個別の情報を盛り込んだ印刷物を大量出力する大企業や、オフセット印刷に加えPODを取り入れてコスト削減を推進する印刷業などを対象に全社体制で販売を加速する。

 同社は1993年、業界に先駆けて電子印刷出版システムの提供を開始。これを機に、POD時代の幕が開いたといわれる。90年代後半からは、無版で大量印刷できる少量・多品種・短納期に対処できるPOD市場が拡大した。

 先行メーカーとして04年には、現在の「プロダクションサービス事業」の核となる高速・高精細のオンデマンド印刷システム「DocuColor iGen3」の新機種を投入した。昨年6月には、富士フイルムグラフィックシステムズと連携、デジタルカラー印刷を中心にビジネスモデル構築やワークフローなどを最新技術を用いて提案する「Color Center」を東京・品川に設立している。

 現在までに、「プロダクションサービス事業」の専任営業300人弱を充て、基幹プリンタの直販営業、技術者を置く東京、名古屋、大阪など全国7拠点に同事業向け人員を配置するなど、体制を整備してきた。同事業本部の勝田勇生・マーケティング部長は「企業で利用する印刷物は、版なし印刷が主流となりつつある。特定の情報を大量にプリントするのではなく、利用者や購入者のニーズに応じ個別情報を載せた印刷物を作ることが、企業のマーケティング上、重要になっている」と分析する。

 このため、同社のオフセット印刷機やデジタル機向け印刷機、Webコンテンツ処理技術、印刷作業のワークフローソフト「FreeFlow」などを組み合わせ「提案型」でシステム導入する必要性が高まり、印刷技術に長けた同社グループの競合優位性が高いと強調する。

 例えば、カード会社は個別の請求書に、購入履歴など属性を基に、ポイント還元や他の製品に関するチラシを同梱する。「生産性と効率性の高いこうした仕組みを構築するには、特定の手法が必要」(勝田部長)と、印刷業に同社製品を導入してきた実績やノウハウ、アジア地区だけで100社が登録する「ユーザー会」などのニーズを生かし、企業の「One to Oneマーケティング戦略」と連鎖した同社独自のサービスビジネスを展開できるという。

 06年度(07年3月期)の「プロダクションサービス事業」は、前年度比20%以上増の約1300億円。世界のPOD市場は、2010年には06年比で約40%成長するという推計がある。国内では、キヤノン、コニカミノルタ、将来的にリコーが競合になるなかで、年率2ケタの成長を遂げ、トップメーカーの地位を堅持することを目指す。