日本IBM(大歳卓麻・社長兼会長)は、中堅・中小企業(SMB)の業界ごとに実績のあるソリューションや製品を特定し、業界団体などと協力して該当業界全体に「横展開」する事業を強化する。「業界別事例紹介セミナー」と題して、関連する企業を招請。同セミナーでは、実績のある製品の事例を同社ビジネスパートナー(BP)やISV(独立系ソフトウェアベンダー)、事例対象の企業関係者らが紹介することでIT導入の機運を促し、新規案件を発掘しつつ「業界デファクト」に仕立てることを狙う。

成功事例「横展開」でSMB制覇

 同事業は米IBMで展開している「VIP(Vertical Industry Program)」という取り組みを日本でも昨年から開始したもの。今年度は5月から本格的にセミナーを開催中だ。この「日本版」とも呼べる展開は、BPやISVが保有するソリューションや成功事例から、業種をさらに細分化した特定業界において、その業界団体や協会・組合と協業して浸透を狙うというもの。例えば、「製造業」であれば、「プラスチック製造」「食品製造」などに絞り込み、基幹システムにこだわらず同業界内で利用頻度が高いと判断したソリューションや製品の成功事例を探す。

 セミナーではそうした事例を積極的に取り上げ、ユーザー企業側のメリットや導入効果などを示す。

 日本版の特徴は、自社IAサーバーやミドルウェアを搭載したソリューションや製品に限らず紹介することや、業界の団体や協会・組合と集客などで協業するという点だ。日本版の事業を担当する大出俊明・ビジネス・システムズ第一営業開発担当部長は「当社製品の搭載・未搭載にかかわらず、業界で実績をあげたソリューションやISV製品は、同じ悩みを持つ業界企業に関心が高い。団体や協会・組合は公益法人が多いため、それらを経由した販売はできないが、クチコミで成功事例が広まることを期待している」と、特化した成功事例を業界内で育て「業界デファクト」にすることで、日本IBMやBPなどのSMB顧客を拡大させることを目指している。

 これまでに、同セミナー用に発掘したソリューションや製品の成功事例は、同社製品を搭載した系列のBPやISVが保有するものを中心に13業界に及ぶ。それらはこの先、ISVや系列パートナーなどを通じて拡販する方針。今年7月には主要パートナーから成功事例を提供してもらい、これまで以上にセミナーを積極的に開催する。その後は「IBMにフォーカスしていない他社基盤のソリューションなども紹介する」(大出・担当部長)考えだ。同社では、100ほどの成功事例を集めたいと考えている。収集がひと段落し、業界団体などと連携ができた時点で段階的にセミナーを開催する計画だ。

 同社は6月4日、SMB市場に向けた世界と国内のビジネス戦略を公表。それによると、現在IBMが世界で売り上げるSMB向けビジネスの規模は全売上高の2割に達している。さらにSMB分野の比率を高めるためにパートナーとの結束を強化する方針だ。国内のSMB市場向けパートナー支援策としては、技術ホットラインやトラブル対応窓口を拡充。セミナーなどへの投資は昨年度(2007年12月期)に比べ倍増させることを明言している。

旅行業界向けセミナーでは

 日本IBMが5月下旬に開いた「業界別事例紹介セミナー」の旅行業界向けセミナーでは、格安海外旅行代理店のアールアンドシーツアーズ(R&Cツアーズ)向けに三和コムテックがシステム開発した事例が紹介された。R&Cツアーズは、世界中の航空会社や宿泊施設、旅行代理店などとネットワークを結んで航空券や宿泊チケットの確保をするが、それ故にシステムにHA(高可用性)が求められる。R&Cツアーズはシステムダウンした事故を紹介し、「システム停止中は、危機回避するため手作業で予約作業をしたが、ダブルブッキングが発生した」ことを報告。これを機に、事業継続をするうえでHAシステム導入の必要性に気づいたことを語った。セミナー参加者は同業者で20人ほどだった。