IT投資の抑制で大手SIerの内製化は一段と拍車がかかり、情報サービス業界では、景気の“二番底”のリスクが高まっている。経済産業省「特定サービス産業動態統計」の情報サービス業の売上高の推移(情報サービス産業協会集計)をみると、2009年10月まで5か月連続で減少。リーマン・ショック以降、多少の凸凹はあるものの、本格的な回復傾向はまだみられない。

 2009年に入り、大手SIerは外注費の削減を強力に推進。野村総合研究所(NRI)は、上期(09年4~9月期)は前年同期比で6.4%の削減、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は上期、前年同期に比べて派遣社員を486人減らした。しかし、実際には、協力会社だけしかノウハウをもっていなかったり、社内の組織を越えた人的リソースの再配分が間に合わなかったりと、「内製化が思うように進まなかった」(大手SIer幹部)ケースも少なくない。

 こうした状況を踏まえ、大手SIerは2010年、社内技術者のスキル転換や組織を越えた人員の再配置をより加速させる可能性が高い。また、自社にはない技術や業種・業務ノウハウをもつ特定の協力会社に重点的に発注する“協力会社の選別”も進む。NTTデータは「コアパートナー」、NRIは「eパートナー」の名称で重点取り引きパートナーを位置づけている。別の大手SIer幹部は、「トヨタの“協豊会”みたいなもの」と、トヨタ自動車に部品を納入するサプライヤー団体のような組織形成が進むと分析する。

 従来は、案件ベースで多種多様な協力会社にソフト開発を発注してきた情報サービス産業。発注先が、また別の協力会社に丸投げする「多重構造」という課題もあった。だが、2010年は、元請けの内製化比率が高まるとともに、外部へは“協豊会”的組織への発注割合が増える。この枠組みから外れた大多数のSIerの仕事が減る可能性が出てくる。

 現在、情報サービス業界には1万3000社余りのSIerがおり、その大多数は中小規模でソフト開発をメインとしている。もし、この領域の売り上げが減り続けるとなれば、情報サービス産業全体の地盤がより一層沈下。二番底に陥る危険性が出てくる。2010年、IT投資が再び活性化することを業界の誰もが願う。しかし、過去に通用したビジネスモデルや商慣習が、徐々に効力を失いつつあるのも事実だ。新たな業界の枠組みの構築に、自ら積極的に関わっていくことが次のビジネスチャンスにつながる。