中国CDN(コンテンツデリバリネットワーク)大手のチャイナキャッシュ(藍汛網絡科技)は、日本のネットゲーム、ネット通販などの中国への誘致に力を入れている。中国ではスマートフォンやタブレットなどスマートデバイスの爆発的な普及で、ゲームやネット通販を楽しむユーザーが急増している。チャイナキャッシュはこうしたユーザーに向けて、CDNを活用した配信を手がけるサービスベンダーで、「日本のコンテンツは、中国で十分に競争力をもっている」(チャイナキャッシュの代翔副総裁)と踏んでいる。
チャイナキャッシュ
代翔 副総裁 CDNの利用頻度が高いのは、ネットゲーム、ネット通販、動画配信の三大分野で、日本をはじめとする外国企業が参入しやすいのはゲームと通販だ。動画配信は、放送と同じく中国では規制が厳しいが、ゲームや通販は比較的参入しやすい。とりわけゲーム市場は流動性があって、「日本企業の参入チャンスが大きい」(代副総裁)と分析。スマートデバイスなどでゲームを楽しむ中国のプレーヤーはおよそ4億人と見積もられており、市場規模も格段に大きい。チャイナキャッシュユーザーのあるゲーム会社では、6か月で1億元(約16億円)を稼ぎ出す成功事例もあるという。
日本のゲーム産業は国際的にみても競争力が高く、中国でも人気がある。代副総裁は「最新の凝ったゲームよりも、むしろレトロゲームのほうが今の中国に合っている」と、日本のゲーム業界の過去の資産であるレトロゲームを、スマートフォンに移植する方法もあるとアドバイスする。中国の都市化によって電車で通勤する人が増え、「通勤途中に手軽に楽しめるコンテンツ」が求められている。さらに、スマートデバイス特有のソーシャルメディアとの連携によって、ゲームの得点を競い合ったり、いわゆる課金によってアイテムを手にして友人とのコミュニケーションに役立てるなど、過去のレトロゲーム時代にはなかった新たなビジネスチャンスも生まれている。
TIS
丸井崇
海外事業企画室長 「日本のレトロゲームは、すばらしい作品が多くあるにもかかわらず、中国のスマートデバイス向けに十分に移植されているとはいえない」(代副総裁)と現状を指摘。そのうえで中国への進出を呼びかけていく方針だ。チャイナキャッシュは、ITホールディングス(ITHD)グループのTISと提携関係にあり、TISは「中国天津で運営している自社データセンター(DC)とチャイナキャッシュのCDN網を組み合わせることでデジタルコンテンツ関連のユーザー獲得に力を入れる」(TISの丸井崇海外事業企画室長)。両社の協業によって、この先5年間で10億円規模のビジネスに育てていこうと考えている。(安藤章司)