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地域のDC事業 連携ビジネスが活発化 大規模事業者への対抗を模索

2015/03/05 15:56

週刊BCN 2015年03月02日vol.1569掲載

 地域のデータセンター(DC)事業者同士の連携ビジネスが活発化している。地域密着で小規模なDCを運営している事業者は、競争優位性を保ちにくい面があることから、地域のDC同士が連携して、大規模事業者に対抗する施策を打ち出しているのだ。

 地域のDC事業者にとって、競争優位を妨げる最大の要因はDC設備が地元にしかないことだ。近隣市町村にまたがってDC拠点を保有しているとしても、東日本大震災のように広域被災してしまえば、冗長性が機能しなくなる恐れがある。そこで、同時被災の可能性がない遠隔地のDC事業者と連携して、相互バックアップによるDR(災害復旧)/BCP(事業継続計画)への対応力を高めるのが、こうしたDC連携団体に加盟する動機になっている。

 国内の主なDC連携団体は、全国データセンタービジネス協議会(JDBC、参加企業10社)、富士通系情報処理サービス業グループ(FCA)DCビジネス相互応援協定(同38社)、データセンタークロスアライアンス(DCXA、同24社)の3団体で、一部重複して参加しているDC事業者もある。JDBCに参加する福島情報処理センター(FIC)の小林秀明・ソリューション営業部副部長は「震災後はとくにDR/BCPをユーザーから強く求められるようになっている」と同時被災しない地域へのデータバックアップはビジネスを伸ばすうえで欠かせない要件だと話す。FICでは震災後に耐震性にすぐれた最新鋭のDCに建て直したものの、単拠点DCであることには変わりなく、この部分を補完したいと考えてJDBCへの参加を決めた。


 二つ目の理由は、新規ビジネスの創出にある。地域密着のDC事業者は、顧客層が地場の自治体や民需が中心となりがちで、ビジネスの広域化に課題をもつ事業者が多い。これまであまり交流がなかった全国各地の同業者と顔を合わせることで、「お互いがもつ商材を組み合わせて、それぞれ地元で販売していくクロスセルによってビジネスの幅を広げることができる」(JDBC代表幹事会社を担っている日経統合システムの大野隆治・執行役員営業本部長)と訴求し、DR/BCPからさらにより踏み込んで営業面での協業を働きかけている。

 三つ目は技術交流だ。クラウドコンピューティングを例に挙げるまでもなく、DCを活用した技術の進歩は速い。地域のDC事業者もこうした技術進展に追随していく必要がある。ライバルという側面はあるものの、技術交流や勉強会などを通じて、切磋琢磨することで、結果的に競争力が高まる。JDBC参加企業の西鉄情報システムの塚本和幸・データセンター営業グループ次長は、「地元九州の産業振興を支えるためにも、常に最新のDC関連技術を身につけた技術者を育成し続けなければならない」と、地元名門企業グループの威信にかけて、技術力向上に強い使命感を抱く。

 西鉄情報システムでは九州地域の景況感の改善を見越して、昨年5月にラック換算で100ラック相当のDC増床を実施するなど投資を拡大。日経統合システムは日経グループ外に向けた、いわゆる「外販ビジネス」への取り組みを強化しており、独立系のFICも営業力向上に努めている。各社ともに地域のDC事業者同士の連携を通じてビジネス拡大に弾みをつけていく方針だ。(安藤章司)

写真左から福島情報処理センターの小林秀明副部長、日経統合システムの大野隆志治執行役員、西鉄情報システムの塚本和幸次長
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