【上海発】日本の有力ソフトウェアベンダーが所属するMIJS(Made In Japan Software & Service)コンソーシアム(内山雄輝理事長=WEIC社長)のビジネスネットワーク委員会は11月17日、中国上海のホテル・ニッコー上海で、日本から訪中したMIJS会員と上海現地の日系ITベンダーで中国市場を考える「MIJS Round Table in 上海」を開いた。当日は両者を合わせ約50人が参加。テーブルを挟んで日本側と中国側に分かれ、中国の日系企業やローカル企業の攻略法や課題などについて意見交換した。

 当日は、日本から訪中したMIJS会員と中国に現地法人を構える日系ITベンダーが対面する形で着席し、セミナー形式でMIJSの近況と中国現地の現状を聞いたあと、1時間以上に渡り、相互に意見を交わした。最後には、軽食を交えて「ビジネスネットワーキング」として名刺交換会を行った。
 
201611181453_1.jpg
冒頭に挨拶するMIJSの内山雄輝理事長

 MIJSの内山理事長は冒頭の挨拶で、「インベストメントを含めたビジネスネットワークのエコシステムを実現する日本型シリコンバレーを目指す『Japan Tech Valley』構想を進めている」と、MIJSの5つの委員会活動などを通じ、MIJSがエコシステムのプラットフォームになることを目指していると説明した。続けて、MIJSの同委員会委員長であるスーパーストリームの山田誠取締役CTOが、「人脈構築や連携の基盤をつくる」という目的に向けて、著名人を招聘してのセミナーや勉強会を日本国内で頻繁に実施し「会員、非会員で相互にディスカッションしてビジネスの機会をつくっている」と、同構想実現の核となる活動を語った。
 
201611181453_2.jpg
ビジネスネットワーク委員会の山田誠委員長がエコシステムを担う活動を説明

 MIJS会員の中で中国市場に進出するソフトベンダーは多い。数年前から海外市場として中国に注目し、幾度となくこうしたイベントを開催し、会員に中国進出を促してきた。しかし、日本と異なる商慣習や制度、日本製ソフトの認知度が低いことなどに阻まれ、期待するほどの実績を上げられていない。

 同イベントではまず、サイボウズ中国(才望子信息技術)の増田導彦副総経理が「中国IT市場について」と題し、中国でサイボウズビジネスを始めて9年目の活動を振り返ると同時に近況について語った。同社は、中国で上海と深センに拠点を構え、来年に台北に事務所を設ける計画だ。従業員は75人。中国市場では「日本で取引がないものの、中国展開している日系企業にグループウェアやkintoneを展開している。日系企業向けでは、クラウドでの提供が主流になっている。ローカル企業に対しては、Garoonの販売に挑戦したが、日系企業向けと同じやり方ではうまくいかず、仕切り直しをしている」と、一定の成功を収めているが、中・長期的にみると課題は多いと指摘した。
 
201611181453_3.jpg
kintoneなど中国市場の現況を語るサイボウズ中国の増田導彦副総経理

 サイボウズ中国は、2013年の中国で開催されたクラウドイベントに初出展し、kintoneをアピールした。これが奏功し、これまでに32社に導入できている。だが、「単価が安く数を多く販売する必要がある。業種カットで、どう展開していくかがカギだ」(増田副総裁)と、kintoneやクラウドでの戦略に磨きをかけている一方で、展開方法について問題を提起した。

 次に、「中国側から見た日系IT企業の姿」をテーマに北京大学の100%出資で設立された中国の北大方正集団のグループ企業、方正(日本法人)の創始者である管祥紅社長が、大手新聞社向けの印刷システムを提供してきた経験から、日系ITベンダーの課題を指摘した。管社長は「日本のIT業界にはゼネコン(一部の大手ITベンダー)があり、業界を仕切っている。印刷システムもゼネコンを介さなければ販売できない状況があった。中国にはそれがない。日本では、ゼネコン体質を改めなければ、世界進出はおろか、発展しない。いまは世界で巨大ベンチャー『ユニコーン』が台頭している。日本でも、ユニコーンを多く生み出す環境と教育体制が必要だ」と、持論を述べた。
 
201611181453_4.jpg
方正の管祥紅社長は、日系ITベンダーが世界で勝てない課題に言及

 また、管社長は、日本と中国のIT市場の違いを次のように語った。「中国で成功しているIT企業は、B2Cが多い。日本は逆でB2Bが市場の大半を占めている。その意味で中国市場は、B2B市場がまだそれほど顕在化していない」。中国では、企業向けITビジネスが未成熟であり、今後市場が拡大すると予測した。

 この両氏の講演を受けてこのあと、週刊BCNの谷畑良胤編集委員がモデレータとなり、全員参加型のラウンドテーブルが行われた。ラウンドテーブルでは、中国市場の現況が中国側、日本側の双方から語られたほか、日系企業やローカル企業を攻略する上での課題を議論した。現地法人を構えるITベンダーからは「IoTなど先進的な案件が製造業などで増えている」「日系企業の現地法人の情報システムはまだやるべきことが多く、提案余地が大きい」と、一時期に比べ市場が好転しているとみる参加者が多かった。
 
201611181453_5.jpg
ラウンドテーブルは中国側と日本側が対面に分かれる形式で進行した

 一方、日本から参加したソフトベンダーからは、「日本の販売パートナーから中国の案件をもらうケースはあるが、市場を攻めるには課題感を感じている」「進出当初は苦労したが、ようやく目が出始めている」と、中国展開に温度差が見られた。これに対し、中国で一定の実績を上げている日系ITベンダーからは「ローカル企業を攻めるにも、ローカルパートナーとの関係を構築する上でも、現地拠点やR&Dがないと信用してもらえない」など、日系ITベンダーの本気度が試されるという意見が相次いだ。