BtoBtoC領域への展開を強化

 日立製作所(日立、東原敏昭社長兼CEO)の指静脈認証ソリューションビジネスが好調だ。個人情報の扱いが厳格化されていくなかで、生体認証技術を使った二要素認証や多要素認証に対する企業からの需要の増加が背景にある。日立では今後、法人向けビジネスとともに、銀行などのBtoBtoC領域でのビジネス展開を強化していく方針だ。

 日立では、指静脈認証ソリューションとして、日立指静脈認証装置「H-1」を2006年から提供している。近赤外線を指に透過させて得られる指静脈パターンを使って個人を識別する方式で、本人拒否率(FRR)0.01%、他人受入率(FAR)0.0001%、登録未対応率(FTE)0.03%未満の精度を実現している。
 
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村上秀一
セキュリティ
ソリューション本部
認証ソリューション部
主管

 H-1の年間出荷台数が近年、大きく伸びている。村上秀一・サービスプラットフォーム事業本部セキュリティ事業統括本部セキュリティソリューション本部認証ソリューション部主管によると、「2011年度の年間出荷台数を1とした場合に、16年度は3.7倍の増加で、17年度は4.8倍、18年度は5.9倍を予想している」という。

 背景にあるのは、個人情報のセキュリティリスクが高まるなかで、より確実な本人認証を実現するために、生体認証が注目されていることだ。近年は、各分野において、ガイドライン制定の動きも加速するなかで、多要素認証の導入が義務付けられる傾向にある。とくに、16年の自治体情報セキュリティ強靭化対策では、マイナンバー利用端末への二要素認証システムの導入が必須となった。総務省からの補助金もあり、その結果、「生体認証業界は特需で、当社では約1700自治体のうち180以上の自治体に採用していただいた」と村上主管は説明する。「指紋認証は、湿気や乾燥に影響されやすく、偽造品もつくりやすい。指静脈認証は指紋認証と比較して外部環境に影響されにくく、安定した認証が可能。生体内部にあるため、生体情報を取得されにくい」などの利点があると話す。

 日立では今後、生体認証とPKI(公開鍵基盤)の技術を組み合わせた「PBI(公開型生体署名)」と呼ぶ独自開発技術を使って、BtoBtoC領域への展開を強化する方針。PBIでは、生体情報を秘密鍵にすることが可能だという。これにより、とくに厳重な管理が求められる一般消費者の情報が扱いやすくなる。これを銀行などに訴求していく考えだ。村上主管は、「個人向けに対しては、PBIという技術ができたことで扱いが容易になってきた。金融機関をはじめ、会員管理などにも今後広まる。将来的には、クレジットカードやキャッシュカードをもたずに決済ができる『手ぶら決済』が実現するとみている。今後、生体認証はお金の取引でもますます広がっていくだろう」と期待を示している。(前田幸慧)