「イワオ塾」でエバンジェリスト養成

――エバンジェリストをしながら、富士通の製品・サービスを販売するきっかけづくりもしていますよね。

中山 はい。エバンジェリストという肩書きではありますが、企業の代表者に会い、トップセールスをしています。富士通は、こういう動きが苦手だったようです。現場にどっぷりと入っていますが、一方で、企業のトップに会って、自社製品・サービスの優位性を説明する機会が少なかった。

 そこで私が、首席エバンジェリストという立場で会いに行けますので、その役割を果たしています。富士通に入ってからも、東証1部の大手企業などのトップによく会っています。会い方はさまざまですが、例えば、Facebook上の知り合いから、ソフトバンクから富士通に転籍したことを知り、「会いたい」とメッセージをいただき、すぐに営業時間を調整します。

 もう一つは、国内最大のユーザー会「FUJITSUファミリ会」があります。そこに呼ばれて講演すると、集まった企業の役員クラスの方から、「当社の社員や役員に同じ話をして欲しい」という依頼を受けます。このように、呼びたくなる話し方をする人が、これまで富士通にはいませんでした。呼ばれた際は、富士通の製品・サービスをアピールしたり、当社の営業につなぐこともしています。
 
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中山五輪男・首席エバンジェリスト(右)と、旧知の仲で同じ年齢のBCNコンテンツプロデューサーの谷畑良胤

――富士通にいながら、富士通社員ではないイメージというか、中立的な感覚を相手に与えるんでしょうね。それが役員など決裁者との接点強化につながっているんですね。

中山 富士通の田中社長からは、入社時に「伝え方から何から、富士通を変えてほしい」といわれました。エバンジェリストのプロとして、とくに「伝え方」を社員に浸透させたい。

――ソフトバンク時代と比べ、バックアップ体制とかは変わりましたか。また、ミッションの一つにエバンジェリストを育成することが挙げられていますよね。

中山 富士通社内には、私に付いているデザイン・チームがあります。しかも、レベルの高い資料を作成してもらっています。従って、以前よりも講演に集中できるので楽になりました。

 また、「エバンジェリスト養成講座(通称:イワオ塾)」を入社時から始めています。ソフトバンク時代は、第三期、総勢約50人を育成しました。富士通でも、各本部長から推薦された15人程度の第一期生の塾を開催しています。最終的に試験に合格した人を正式にエバンジェリストにするということをしています。第一期生は、マーケティング部門の社員が集まっています。今夏以降は、営業やSEなどに幅を広げます。これを継続的に実施し、さまざまなタイプのエバンジェリストを育成する予定です。例えば、製品に特化した人や、流通・小売りなどの分野に特化した人を育てます。現在は、1回2時間程度の講座を隔週で半年間やっています。
 
 いずれは、日本全国と海外の外国人のエバンジェリストを育成することも、視野に入れています。富士通に転籍した際、英語のメールが多く飛んできた。「私もエバンジェリストになりたい」といったメッセージがきました。

――富士通に入ってから、新たな目標はできましたか。

中山 経営戦略面に足を入れたいです。富士通の役員は、外の会社からきた方が少ないんです。私は、複数の企業で、営業やマーケティングなど、(職務・職位も)多くを経験していますので、これを生かしながら経営に深く入り込みたい。

――中山さんが富士通に入社したことで、御社のイメージは相当変わったように思いますね。

中山 それは、よくいわれますね。

――ところで、「常務理事」というのは、どんな役割なんですか。また、富士通の現況をどうみていますか。

中山 厳密にいいますと常務理事は、内部統制を監視・監査する規定になっていますが、いままでにない特別なポジションと理解しております。役員のなかで、富士通以外から入ってきた人は、31年ぶりだそうです。当然、役員会議も出席します。いま顧客は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の世界を志向しようとしています。私の印象で、いまの日本は、DXを推進する“夜明け前”と感じています。ビジネスの状況としてはステイで、次にジャンプするまでの間、待っている状態と感じています。それに向けて富士通としても、製品・サービスを整備し、ブロックチェーンやRPAなど注目されている分野への技術開発を強化しています。富士通は、なんといっても「国内最大のSIer」です。その立ち位置のよさを生かせる時が迫っています。

――5月には、富士通に入社して初めて、晴れの舞台となる「富士通フォーラム2018東京」に登壇するそうですね。

中山 5月17日と18日に「富士通フォーラム2018東京」(http://forum.fujitsu.com/2018/tokyo/)を開催します。私は、複数セッションを担当しますが、とくに聞いて欲しいのは、いま話題のメディアアーティストの落合陽一氏と、企業再生をテーマに2人でトークセッションをしたり、日本マイクロソフトのエバンジェリストである西脇資哲氏と、聴講者と一緒にお酒を酌み交わしながら、エバンジェリストについて語り合います。全部で7セッションをこなします。

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 富士通の歴史上、同社以外から役員に就任した例は中山さんを含め2人だけという。その意味で、富士通のイメージを変え、製品・サービス訴求を強化しようという経営の危機感があり、中山さんを採用したのだろう。私の知る限り、「富士通の中山五輪男」としての講演を聞いた方は、異口同音に同社のイメージがいい意味で変化している。(谷畑良胤)

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