まずは、Watson使ったチャットボット「CBシリーズ」

 大阪市の日本電通(上敏郎会長兼社長)はこのほど、グループ会社で人工知能(AI)関連の新規事業を開始した。AIの応用研究や利用技術のコンサルティングと関連ソリューションを主に中堅・中小企業(SMB)に対し提供する。4月1日付でエス・アイ・シー(SIC、仁司宏一社長)の東京本社にグループ会社からAIエンジニアが集結するなど、活動が本格化。同事業で製品開発の中核を担うNDIソリューションズの岩井淳文社長に、「AIソリューション」の具体的な製品と今後の取り組みを聞いた。

基幹連携できるチャットボット

 日本電通グループのAIソリューションサービス事業では、AIを中心とした先進技術の応用研究や利用技術のコンサルティングに加え、関連ソリューションを提供する。日本電通を含めNDIソリューションズや新潟市のNNC、徳島市の四国システムなど、グループ6社が一体で販売するほか、導入・運用支援を行う。グループ以外の販売会社経由のチャネル販売も検討中だ。また、基幹系や情報系、RPA(Robotic Process Automation)などのパッケージをもつ独立系ソフトウェアベンダー(ISV)と製品連携を強化する方針だ。
 
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 グループ内では、2017年から「IBM Watson」を活用したAIチャットボット製品「CBシリーズ」の開発と販売を開始し、ビジネスが軌道に乗りつつある。この1年間では、販売活動を通じて知見を集積したほか、社内検証を通じ定量的な効果を上げるまでに製品を強化。中期的にグループの収益性を高める基盤事業に育てる考えだ。

 今回提供するAIソリューションの中核製品は、IBM Watsonを活用した「CBシリーズ」という法人向けチャットボットで、問い合わせ業務を中心に社内外での業務に活用できる。

 同シリーズには、1問1答形式のAIチャットボットの「CB1」と、質問者と対話の継続を実現する上位製品の「CB2」の2種類がある。同シリーズの製品開発をしたNDIソリューションズの岩井社長は、「社内のカスタマサポートや顧客のサポートサービスの24時間365日対応、社内・社外業務向けの問い合わせの自動応答などが可能だ」と話す。

 CB1は、質問に対する回答の確信度が低い場合には「わかりません」といった単純な返答で終了する。一方のCB2は確信度が低い場合、複数回答候補の表示や聞き返しをするほか、時間や場所、名称、数量などでキーワードの絞り込みをすれば、高い回答を導き出せる。

 上位製品のCB2に関しては、オプション製品が充実しているほか、他システムと連携性を特徴としている。岩井社長は、「IBMのAS/400や基幹業務システム(ERP)であるOBCの奉行シリーズ、内田洋行のSuper Cocktail Duoなどとの連携が可能で、基幹系にある業務データを照会し、請求書を自動作成するといった活用ができる」と、他社のチャットボット製品と異なり法人での利便性を追求しているという。

AI精度可視化ツールで特許

 CB2は、対話形式で絞り込んだ意図や要望を他社が提供するRPAや基幹システムと連携し、更新系業務処理の自動化などにも対応しているほか、各種オプション製品が充実している。例えば、有人チャットやビデオチャットとの連携のほか、SNSのLINEなどオムニチャネルやSkypeとの対応などがそれだ。将来的には、AIスピーカーやヒューマノイドロボット「Pepper」などの音声言語にも対応していく予定だ。

 ただ、チャットボットの利用では、FAQのスクリプト作成や的確な応答を導き出すまでのチューニングに時間がかかる。そこで同グループでは、これまで集積した知見の成果の一つとして、学習データ内のQA相関関係を可視化し、チューニングポイントを特定する機能をもつ「コーパス(AI用の学習データ)精度可視化ツール」を開発した。同ツールは特許を取得している。このツールを使えば、短期間でAIチャットボットの導入が可能になる。

 CBシリーズは、NDIソリューションズの人事・総務部門で、実際に使用して製品を改良してきた。同社内には、人事・総務関連の対応をするFAQは、自社のポータルサイトに掲載してある。ただ、回答に到達せず、利用率が低く省人化に必ずしも貢献していなかった。ここに対し、CBシリーズを適用し、3か月余りかけてチューニングを繰り返した。

 その結果、3回程度の機能変更を経て、現在では、当初55%程度だった正解率が93%まで引き上げられたとする実証実験の結果が出たという。同グループでは、NDIソリューションズ社内で得た検証結果を営業活動に生かす考えだ。NDIソリューションズの岩井社長は、「CBシリーズは、プロトタイプ構築まで1か月、業務で使えるまでに2~3か月と短期間でローンチできる」と優位性を強調する。

 4月1日付で、食品製造業向けSIを得意とするSICの東京本社にグループ会社から10人のAIエンジニアを出向させ、全社の知見を集約する。SICはチャットボットにとどまらず、さまざまなAIを業務で活用するための応用研究や関連ソリューションの開発を開始した。

 SICが開発するAIソリューションは当初、グループ内のITベンダー間で連携し販売するが、そこで得たノウハウを取り込み最適な導入方法を固め、他の販売会社からの提供を目指す方針だ。さらには、ERPやCRM(顧客管理)、SCM(サプライチェーン管理)、BI(ビジネス・インテリジェンス)などの製品をもつISVと連携し、連携ソリューションを提供することも検討している。

 日本電通の連結売上高は17年3月期で349億7900万円(前年同期比6.9%増)。AIソリューションサービス事業では、今後3年間で30億円の売り上げを目指す。(谷畑良胤)