日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は5月30日、サマーセミナーを開催した。基調講演では、東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻の大関真之准教授が、「量子コンピュータが人工知能を加速する~量子コンピュータの原理と人工知能の将来像~」と題し、量子コンピュータの基礎から最新動向まで、デモンストレーションを含めながら紹介した。

東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻の大関真之准教授

 「昨年は量子コンピュータ元年だった」と大関准教授。その理由として挙げたのが、IBMの量子コンピュータ「IBM Q」が、昨年の5月17日に17量子ビット(Qbit)を実現したということからだ。量子コンピュータは、17量子ビットになったことで、間違い訂正ができるようになった。

 「コンピュータはときどき計算を間違えるが、間違い訂正の技術が進んでいるため、ユーザーがそれに気づくことはない。量子コンピュータも同様に間違えるため、間違い訂正を実装する必要がある。その仕掛けが、17量子ビットになったことで採用できた」。IBM Qが17量子ビットを実現したことにより、汎用コンピュータとしての活用が期待できる状況に至ったのである。量子コンピュータ元年とするのは、そのためだ。以降、IBMは50量子ビット、グーグルが72量子ビットといったように各社の開発競争が続いている。

 量子コンピュータは、大きく二つに分けることができる。一つは、量子ゲート方式。前述のIBMやグーグルの量子コンピュータが量子ゲート方式を採用している。もう一つは、組み合わせ最適化問題の計算を得意とする量子アニーリング方式。こちらはカナダのD-Wave Systemsが、2000量子ビットの量子コンピュータの製品を販売している。量子ゲート方式に対し、「量子アニーリング方式の量子ビット数が大きいのは、間違い訂正を実装する必要がないため」(大関准教授)である。

 また、量子ゲート方式について、大関准教授は「問題は何に使えるのかということ」と指摘。暗号解読に活用できるとの声もあるが、「1000万量子ビットが必要。現実的ではない」という。

 一方、活用段階にあるのが、量子アニーリング方式。組み合わせ最適化問題は、金融や製薬をはじめ、さまざまなビジネスに適用できることがわかっている。こうしたことから、大関准教授はD-Wave Systemsの量子コンピュータを活用して研究に取り組んでいる。講演では、D-Wave Systemsのマシン上で、組み合わせ最適化問題を瞬時に解くデモンストレーションを実施した。

 大関准教授の研究室では、学生が量子コンピュータの研究に取り組んでいる。「5年後、東北大学は量子コンピュータ関連の人材を多く輩出するようになる」とのこと。企業も受け入れるための準備が必要だ。