富士通研究所(佐々木繁社長)と早稲田大学(鎌田薫総長)は9月19日、デジタル回路上で量子アニーリング方式を実現した「デジタルアニーラ」の共同研究で連携活動協定を結んだ。これに伴い、早稲田大学の「グリーン・コンピューティング・システム研究機構」内に、共同研究拠点として「Fujitsu Co-Creation Research Laboratory at Waseda University」を設立した。

 同研究拠点では、実社会の組み合わせ最適化問題を解くためのソフトウェア開発を行う。組み合わせ最適化問題については、早稲田大学の全研究を対象に、研究テーマを広く募集。共同研究で得られた成果は、富士通のデジタルアニーラ事業に取り込むことを予定している。

 富士通が年度内に提供開始を予定している第2世代のデジタルアニーラは、スペック上では世界最先端のアニーリングマシンであり、疑似的な量子コンピューターではあるものの、量子コンピューター市場の開拓を担うマシンとして期待されている。また、第1世代のデジタルアニーラは、すでにクラウドでサービス提供されている。そのため、実運用が可能な状況にあるが、一方で「アニーリングマシンは何に使えるのか」という根本的な課題が残っている。一般的には、医療や金融、物流、公共政策などで活用できるとされているが、実運用に至っていないのが実情だ。富士通としては、デジタルアニーラのサービス提供を開始しているだけに、早期の事例がほしいところである。

 早稲田大学は、グリーン・コンピューティング・システム研究機構を2011年に設立し、産学連携研究に取り組む中で、量子アニーリング研究や組み合わせ最適化問題の研究を進めてきた。今回の共同研究拠点の設立により、アニーリングマシンの活用研究に取り組むための環境を手に入れることになる。

 デジタルアニーラは、量子コンピューターではないことと、汎用的に使えるとされる量子ゲート方式でもないことから、国内の学術関係者は海外のメーカーとの連携を強めている。富士通もカナダのトロント大学との共同研究を進めるなど、提携先を海外に求める傾向にあった。今回の富士通研究所と早稲田大学の提携は、そうした状況を変えるだけでなく、国内の量子コンピューター市場が前進するきっかけになりそうだ。(畔上文昭)