【上海発】富士通グループの富士通(中国)信息系統(FCH)が、中国市場でのビジネスを加速させている。顧客やパートナーとの「共創」を進め、中国市場に合った新たなビジネスモデルの創出が目標で、「中国の市場の可能性は大きく、われわれにもチャンスはある」と意気込む薛衛CEOに話しを聞いた。(上海支局 齋藤秀平)

薛衛CEO

――中国でのFCHの役割は。

 中国では、富士通グループは38社あり、従業員は1万人を超えている。その中でFCHは、ICT事業の中核企業と位置付けており、お客様の業務にかかわる製品やサービス、ソリューションを幅広く提供している。今のところ、現地の中国企業と日系企業、著名な外資企業を含めて約3000社以上の顧客基盤をもっている。お客様と一緒に現場でイノベーションを実現し、業務の変革に貢献することがわれわれのビジネスの役割だ。

――顧客の割合はどうなっているか。

 顧客の約半分は中国企業、あとは日系企業と著名な外資企業という割合になっており、業種は製造や流通、小売りなどと幅広い。ビジネスをスタートした時点では、日系企業を含めた外資企業がメインだったが、最近は中国企業向けに製品やサービスを提供することが多くなっている。

――昨年4月にCEOに就任し、どのようなことを理念としているか。

 「デジタルトランスメーションを原動力に、富士通一流のICTプロダクト・技術・サービスとCo-creation(共創)の理念のもと、中国市場にフィットしたビジネスモデルや技術を創出し、中国の社会発展に貢献するトップベンダーとしてのプレゼンスを確立する」をビジョンにしている。企業を木に例えると、しっかり水分と栄養を土地から吸収しないと大きくなれない。したがって、中国市場にフィットすることは、われわれが成長する上で非常に重要だと考えている。

――具体的に、どのような領域に注力しているか。

 注力する領域は大きく二つある。一つはスマートファクトリーだ。中国政府は、国家戦略として「中国製造2025」を打ち出し、製造業の発展に大きく力を入れている。それに伴い、各企業はデジタル改革を進めている。富士通が持っているものづくりに関係する製品や技術はグローバルでもトップクラスだと自負しており、中国が目指す方向性と合っている。そしてもう一つは、スマートシティだ。スマートシティといっても幅が広いので、選択と集中で対象を絞り、世界的に注目されているニューリテールに焦点を当てている。

――スマートファクトリーとニューリテールに関して、最近ではどのような取り組みを進めているのか。

 スマートファクトリーでは、中国国有大手の上海儀電(集団)と今年3月に合弁会社を設立した。お互いに手を取り合って、製品や技術を活用しながらしっかりと丁寧に育てていくことを確認している。こういったことに挑戦することで、新たなステージに立つことができたと自信をもっている。一方、ニューリテールに関しては、上海浦東空港のプロジェクトがある。免税店を含めた空港内の店舗管理システムのリプレースプロジェクトを受注した。単にPOSシステムを置き換えるだけではなく、空港を訪れるお客様の情報を店舗管理システムと統合することが大きな特徴だ。駐車場やホテルなどの周辺施設との業務連携も見据え、ビッグデータの分析など先進的な技術を活用していくつもりだ。

――現地のITベンダーとの競争や、中国市場への入り方についてはどのように考えているか。

 ビジネスの世界では、当然、企業間での競争はあるが、それは決して戦争ではない。お互いに刺激を与えながら成長し、それぞれが役割を果たし、市場を育てていくことが大事だと考えている。中国のITベンダーは非常に力をつけており、ものすごいスピードで成長を続けている。競争相手である地場の企業とは、場合によってはパートナーとなり、いいビジネスモデルを作っていくことが必要だ。

――CEOに就任してからのビジネスの手応えはどうか。

 市場の反応は非常にポジティブで、商談も増えている。自分たちだけで独自にやるのではなく、お客様もパートナーも含めて議論する機会が増え、商談も中身のある会話が多くなっている。最近はマーケティングにも力を入れており、われわれのビジョンをどんどん外に発信している。その結果、中国市場で認められることが多くなった。例えば、中国メディアの「通信商業報」が9月に発表した「中国IoTトップ企業」で19位に入ったほか、界面新聞が10月に開催した「工業の魅力フォーラム」で、弊社の工楽未来(COLMINA)が2018年のイノベーション製品に選ばれた。日系のトップランナーとして市場から評価されており、ビジネスの方向性としては非常に順調だ。

――今後の意気込みは。

 中国市場で成功するために決まった形はない。繰り返しになるが、オープンマインドをもって、中国市場に合ったビジネスモデルを作っていくことが大事だ。ビジネスでは、決定と実行を少しでも躊躇したら、どんどん置いていかれる。今まででは考えられないようなスピードで考え、実行し、方向を修正できるかがカギになるとみている。中国市場は米国に次ぐ巨大な経済規模を誇り、これからも成長が続く見通しだ。市場の可能性は大きく、われわれにもチャンスはあると期待している。これからも共創の理念をもって、富士通の持っている製品やノウハウ、技術を中国で大々的に展開し、地場企業や外資企業と一緒に現場でデジタルトランスフォーメーションを起こしていきたい。


PROFILE
薛衛(Xue Wei)
1997年に富士通入社。富士通中国区システム集積営業部統括部長や中国区営業本部本部長などを歴任し、富士通グループの中国におけるシステム集積事業の開拓などを担当した。2014年からカナダで研修に入り、在住期間中に富士通北米グループで勤務した後、17年4月から現職。富士通入社前は華東師範大学コンピューティングセンターでの勤務経験がある。