東芝は7月7日、自動運転に不可欠な「目」の役割を担う距離センシング技術「LiDAR」で、「ソリッドステート式LiDAR」向けに長距離測定と高解像度を実現する受光技術を開発したと発表した。

新開発したSiPM配列チップ

 LiDARは、レーザーと検出器を回転させることで観測する「機械式」が主流だったが小型化・軽量化が難しくコストも高いといった課題があり、現在は、半導体技術や光学技術で機構部を置き換える「ソリッドステート式」が増加している。機械式と比較してソリッドステート式は長距離測定・解像度に課題があったが、今回開発した受光技術により、ソリッドステート式で高解像度を実現しながら従来の4倍となる200mの長距離性能を実証した。同社は18年に機械式で、当時、世界最高となる200mの長距離測定性能を実現したが、今回開発した技術は機械式と同レベルの長距離性能の達成となる。

 新たな受光技術では、従来困難だった超高感度受光デバイスSiPMの小型化を可能にし、高解像度と長距離測定性能の両立を実現した。SiPMは、微かなレーザーの反射光を高感度に検出することが可能で、LiDARの長距離測定に適した受光デバイス。

 従来のSiPMでは、一度光を検出した受光セルは一定時間応答ができなくなるといった物理上の特性があり、漏れなく光を検出するためには非常に多数のセルを搭載することが必要だった。今回、SiPM上に受光セルを再起動させるトランジスタを搭載することで、受光セルが応答できない時間を短縮することに成功した。これにより、少ないセル数でも効率よく光を検出できるようになり、SiPMの大幅な小型化を実現した。小型SiPMを用いることで、限られたパッケージ面積内に多数のSiPMを配列することができ、高解像度化を図った。

 また、この受光技術は、市販のレンズと組み合わせて使用することができ、利用用途によって生じる複雑なカスタマイズが不要となる。乗用車、バス、作業車など、多様な車種への搭載が容易となり、今後、ドローンやロボットへの搭載も期待できる。同社は、この技術を市販のレンズを用いたシステム構成に実装し、高解像度を保ったまま、ソリッドステート式で従来比4倍となる200mの長距離測定性能を達成している。

 今回の受光技術は、1台の車両に対して複数のLiDARの搭載が必須となる、レベル4以上の高度自動運転の実現に大きく貢献する。同社では、さらなる測定距離の延伸、高解像化、小型化についての研究開発を進め、22年度までの実用化を目指す。