矢野経済研究所は8月25日、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組み状況について調査を実施し、DXに対する意識や意欲に関する考察を発表した。

業種別DXのポテンシャル(攻めのDX)

 今回の調査ではDXを、革新的な製品やサービスの開発、ビジネスモデルの変革、イノベーションを実現する「革新的な取り組み(攻めのDX)」、基幹システムの刷新やテレワーク対応、既存業務効率化、業務プロセス・組織風土・企業文化を変革する「IT刷新(守りのDX)」の二つに分類し、国内の民間企業と公的機関523社・団体に対し、郵送でアンケート調査を行った。

 アンケートでは、革新的な取り組み(攻めのDX)への意欲とIT刷新(守りのDX)に対する意欲、それぞれについて8段階の数値(「8」が積極的、「5」が普通、「2」が消極的、初めて聞いたを「1」としている)で回答を得た。そのため、数値が大きいほど積極的であることを示している。

 国内の民間企業と公的機関523社の平均値は、それぞれ革新的な取り組み(攻めのDX)が3.37、IT刷新(守りのDX)が3.78であった。どちらも「普通」を示す5を下回り、企業のDXに対しての消極的な姿勢が明らかになった。また、わずか0.41ポイントではあるが、IT刷新(守りのDX)への意欲が革新的な取り組み(攻めのDX)への意欲を上回っており、日本の平均的な企業は革新的な取り組みへの意欲が乏しく、その結果も想像通りの印象となった。

 なお、IT刷新(守りのDX)について初めて聞いた(「1」と答えた)比率は2.3%(12社)だったが、革新的な取り組み(攻めのDX)について初めて聞いたと回答した比率は20.5%(107社)となっており、ユーザー企業のDXに対する理解、とくに攻めのDXへの認知は不十分であった。DX関連ベンダーは、DXに対する啓蒙活動の手を休めている暇はないと考えている。

 また、今回は法人アンケート調査結果に加えて、DX関連ベンダーへの調査などから業種別にDXへ取り組む意欲や意識の高さについて考察した。

 とくに革新的な取り組み(攻めのDX)への意欲や意識の高さについて、ポテンシャルが高いのはサービス業であった。サービス業と一口に言っても、さまざまな業種の企業が混在しており、サービス業内でもDXに対する温度差はある。運輸や建設業、医療分野などでDXへの取り組む意欲が高いが、飲食業はSNSを活用したマーケティング、集客やキャッシュレス決済などにとどまっていることが多い。

 不動産業は、これまであまりDXが進んでこなかった業種の一つだが、コロナ禍で対面営業が困難であったり、内見が減少したり、さらにはテレワークに起因する事業所賃貸契約の解約や家賃減額など、環境が大きく変わり始めたことから、攻めのDXに対するポテンシャルが膨らみ始めたと推測する。

 金融業などは、これまですでにある程度、攻めのDXを進めているため、調査結果では今後の意欲が低めに出た可能性もある。また、DXの推進については、多くの業種で大手企業から中小企業への流れはあり、今のところテレワークなどの必要に迫られたところ以外のDXについては中小企業にまで降りてきているとは言い難い。そのため、業種別という一つの物差しで全て測りきれるものではないとしている。