リコーは富士通グループで業務用スキャナメーカーのPFUを今年7月1日付でグループに迎え入れる。PFUの業務用スキャナを業務プロセスにおける“エッジデバイス”と位置づけ、力を入れる「業務フローのデジタル化」の間口を広げる考えだ。買収方式はリコーがPFUの株式80%を840億円で買い取り、富士通はPFU株式の20%を継続して保有する。リコーの山下良則社長は、PFUを接点として「リコーグループと富士通の関係強化も進めていく」と話す。
山下良則 社長
リコーは複合機を筆頭にオフィスでの顧客接点が多く、現場業務での顧客接点を多く持つPFUとの客層が異なる。PFUの買収によって顧客接点が広がり、「相乗効果が期待できる」(山下社長)と判断した。
PFUの業務用スキャナは、大きさが揃っていない伝票や申込書、免許証、各種の身分証明カードなど異なる材質の原稿を、傷つけることなく読み取ることが可能。一般的な複合機とは「構造や設計思想が大きく違う」(リコーの大山晃・取締役リコーデジタルサービスBUプレジデント)ため、ハードウェアの面でも相互に補うことが可能だとリコーはみている。
富士通の時田隆仁社長は「エッジ領域に強みを持つリコーと協業を深めることで顧客に新しい価値を届けられる」と語る。PFUの業務用スキャナは、国内と欧米市場でトップシェアを握っており、PFUとリコーは、国内外の販売チャネルや顧客へのクロスセル、アップセルを見込むとともに、ITソリューション領域で強みを持つ富士通との協業も進める。
リコーは2025年までの5カ年で、OA機器メーカーからデジタルサービス会社へ変革する経営戦略を推し進めており、今回のPFU買収もその一環。複合機や業務用スキャナをデジタルサービスの入り口に当たる“エッジ”として位置づけ、ドキュメント処理や業務プロセスといった業務フローのデジタル化に欠かせないデバイスと定義している。PFUの業務用スキャナが加わることで、デジタルサービスの間口を一段と広げていく。
業務フローのデジタルサービスでは、クラウド基盤の「RICOH Smart Integration(RSI)」上に、文書管理のDocuWare、業務プロセスのデジタル化ツールとして中小企業向けにはリコー版のkintoneと、中堅・大企業向けにAxon Ivyを揃えた(図参照)。これら業務フローのデジタル化の分野で25年までに500億円のビジネス創出を目指す。
また、PFUは国内向けに産業用コンピューターやネットワーク機器などを開発しており、サービス拠点を全国に約100カ所に展開している。産業分野では製造会社のリコーインダストリアルソリューションズと一部重複する部分があり、サービス拠点は国内販売会社のリコージャパンと重なる部分がある。だが、山下社長は「隣接する拠点の統廃合はあっても、客先で競合する関係にはないため互いに補完しながら成長できる」と語る。
(安藤章司)