コニカミノルタジャパンは9月21日、空間デザイン事業に関する取組みについてメディア説明会を開催した。説明会では2021年7月にリニューアルした本社オフィスで自社実践した検証結果と、コロナ禍でオフィス改革を支援した事例を紹介。合わせて、オフィス改革支援の新サービスとして「Programming Design Task Flow」を発表した。
オフィス改革支援の新サービス「Programming Design Task Flow」を発表
「Programming Design Task Flow」は、各組織の役割やワークスタイルを行動特性の観点からロジカルに分類・分析し、オフィスのレイアウトやデザインに落とし込む手法。プロジェクト方針検討(社員にヒアリングし、ビジョンを模索)、理想のワークプレイスのインプット/アウトプット(ワークプレイス勉強会、ツアー、ワークショップ、アンケート)、ワークプレイスの検討(ワークスタイルの分析・整理、基本方針策定)、デザイン(レイアウト作成、デザイン検討、コスト・スケジュール計画)の四つのステップを経て、直感的な感覚に頼らない課題解決型の働く場を作り上げるサービスだ。
同社は13年に働き方変革プロジェクトを発足。14年に本社オフィスを移転し、フリーアドレス導入やICTインフラ整備を実施した。その後も保管文書ゼロ化(16年)、テレワークの全社運用(17年)など継続的にオフィス改革を推し進め、21年には「つなぐオフィス」という新たなコンセプトのもと、本社オフィスをリニューアルした。外部企業に向けたオフィス改革支援事業は12年に小規模でスタートし、18年から自社実践で蓄積したノウハウを生かす形で空間デザイン事業として本格展開している。
説明会の冒頭で栗山秀樹・執行役員 マーケティングサービス事業部事業統括部長は空間デザイン事業の本質を「働き方の“見える化”にある」とし、「企業への帰属意識醸成やコミュニケーション創出によって、従業員のエンゲージメントを高める。その結果として優秀な人材を確保し、働きやすいオフィスを作り上げていく。こうした一連のプロセスを顧客としっかり握って展開していくことを重視している」とコメントした。
栗山秀樹
執行役員
21年にリニューアルした本社オフィスのコンセプトである「つなぐオフィス」は、七つの「High(High Focus、High Creativity、High Collaboration、High Function、High Secure、High Innovation、High Community)」の実現を掲げている。宮本晃・マーケティングサービス事業部 空間デザイン統括部長は例としてHigh Focus、High Creativity、High Collaborationの具体的な取り組みを説明した。
High Focusは社員の集中力と作業効率を高める環境を指す。リニューアルでは、形状・環境の異なる5種類の集中席を用意。家具の色や形を変えたり、自社開発の予約アプリで利用時間・利用目的を設定したりすることで集中力の向上を促している。また、他のエリアの音を遮断するためにサウンドマスキングを導入。「まったく音がない状態というのも集中できないということもあるので、どの程度の音が出ている環境が最も集中できるのか、効果想定をしている」(宮本統括部長)。
High Creativityでは、アイディアを考えるためのリラックスした空間を目指した。一人で集中できる特別な専用空間だけでなく、他部門とコミュニケーションをとりやすい仕掛けも用意している。他の社員とのコミュニケーションを活発化させるためのHigh Collaborationでは、エリアを異なる家具を配置した16区画に分け、常に会議やミーディングを新鮮な環境で実施できるようにした。さらに、そのうちの6区画では1年に1回の頻度で家具を入れ替えるサブスクリプションも採用しているという。
自社実践の分析によっていくつかの傾向も見えてきた。たとえば、コミュニケーション目的で出社した社員は全体平均で45%だったのに対して、20代は62%で、若手ほど関係性強化のために出社を求める傾向にあることが分かった。オフィスで打ち合わせをした方が「話しやすい」「熱量や感情が伝わる」という声も多く、出社とテレワークを使い分けできる環境づくりの重要性を裏打ちする結果となった。
宮本統括部長は「少子高齢化や生産性低下などの日本の抱える問題を考えると、ハイブリッドな働き方は今以上に進んでいくはずだ。ただ、会社の“らしさ”がなくなってしまうような働き方の変化は競争力を失うことにもなりかねない」とオフィス改革で注意すべきポイントを指摘。「自社実践を先駆けて行って得た失敗・成功・検証を、改革を模索している顧客の支援に役立てたい」と語った。(大蔵大輔)