コニカミノルタジャパンは、月額5万円から使える需要予測SaaS「AIsee(アイシー)」の営業活動に注力している。2021年8月の発売から、およそ1年で約80件を受注した。販売ペースは急拡大しており、23年3月末までに累計400件を視野に入れているという。「小売店の販売予測や飲食店の来客予測、食品メーカーの受注予測などでの活用が急ピッチで進んでいる」と、プラットフォームビジネス推進統括部の荒井勇輝・営業推進部部長は手応えを感じている。
荒井勇輝 部長
同社では、精度の高い需要分析を行う「カスタマージャーニーDMP」を開発してきたが、個別のシステム構築(SI)を伴う大規模なもので、中小企業ユーザーの導入のハードルが高いことが課題になっていた。そこで手軽な操作で需要予測が可能なAIseeを投入したところ、好評を得た。
AIseeは、商品コードや数量、金額、店舗名、売上日などの項目を、販売管理システムなどから取り込むことで需要を予測する。データ分析の専門的な知識がなくても簡単に使えて、データ整備にかかる手間が必要ない分、カスタマージャーニーDMPに比べるとある程度の幅を持った予測精度となる。荒井部長は「熟練の経営者の勘や経験に比べて精度は劣るが、大きく予測を外さないのが売り」だと話す。
例えば、コロナ禍で業態転換を迫られた小売店や飲食店のケースでは、不慣れな業態や商材で販売数の見当がつかずに困ったときにAIseeを使って、目安を導き出すといった用途で活用が進む。また、フランチャイズ店の新人店長の支援ツールとして応用したり、店舗数が10~20店舗へと増えたときの仕入れや在庫数の目安を割り出すツールとして採用したりするケースが増えている。あるスポーツジムでは来店者数の予測を客に開示し、密になるのを避けたいと考える客の参考にしてもらうといった使い方をしている。
AIseeは直販をメインとしてきたが、今後は間接販売の比率も増やす。すでにコニカミノルタ製複合機の販売パートナーをはじめ数社が実際に取り扱っているという。中小企業向けにSIを手掛けるSIerなど販売チャネルを拡充し、受注件数を増やしていく方針だ。
(安藤章司)