NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は7月11日、竹中工務店、清水建設と建設現場のDX実現に向けた協業を発表した。これまで建設DXを進める上で課題であった施工管理情報をデジタル化し、データ活用につなげるソリューションを開発。建設現場の生産性向上や働き方改革につなげる狙いだ。開発したソリューションは外販する予定で、NTT Com常務執行役員の小島克重・ビジネスソリューション本部長は、「業界標準となるソリューションの開発を目指す」と意欲を示した。
(大畑直悠)
左から清水建設の山崎明・専務執行役員、
NTTコミュニケーションズの小島克重・常務執行役員、
竹中工務店の丁野成人・専務執行役員
今回の協業では、建設業における工程管理や関係会社との作業調整など、業務ごとにアプリケーションを開発する。加えて各アプリケーションのデータを連携することで、包括的な施工管理情報のデータ活用を実現するソリューションを開発していく。
連携するデータは、工事計画の作成やリソースの手配などの「予定データ」と、現場の具体的な作業指示や進捗などの「実績データ」で、材料などのリソースの使用実績から工程計画の質を向上させたり、リソースに関する生産性の指標を数値化したりする。
また、これまで建設現場で使われてきたソリューションは、業務ごとに細分化され、ソリューション間でのデータ連携が難しいという課題があった。こうしたサイロ化を解消することで重複入力や手配ミスを削減し、管理者の業務プロセスの効率化につなげる。施工管理業務の3割ほどの効率化を目標にするという。
今後の具体的な取り組みについては、ワーキンググループを設置し、各社の知見を持ち寄ってソリューションの開発を進めるとともに、竹中工務店と清水建設の現場への実装・定着化を推進する。
清水建設の山崎明・専務執行役員は取り組みの意義について、「工事全体のスケジュールを見ながら、月ごと、日ごとに何をやるべきかを計画するのは、現場監督者の経験に基づいていて判断されてきた。その結果、ナレッジが属人化され、建設DXを阻む一因になっていた」とし、「データ連携により、実績に基づいた工程表のデータベース化が可能になり、生産性の向上に大きく寄与するだろう」と強調した。
開発したソリューションは、NTT Comが外販する。本年度中に一部のアプリケーションの販売を開始する予定。小島常務執行役員は「全国津々浦々に持つNTT Comの支社を生かして、中小の建設事業者やゼネコン、協力会社も含めて、現場関係者に広く活用されることを目指したい」と訴えた。
協業の背景については、これまでNTT Comは竹中工務店、清水建設とそれぞれ個別に連携してきたが、両社が施工管理上のデジタル化について、共通の課題をもっていたことから、3社の協業につながった。
建設業界では、来年4月から適用される時間外労働時間の上限規制や、慢性的な就業人口の減少が業界で課題となっている一方で、建設投資額は増加傾向にあるという。竹中工務店の丁野成人・専務執行役員は「建設業界は、現場管理者の長時間労働に悩まされている。DXを実現し、建設現場全体の生産性を向上させることは急務だ」と説明した。
将来的には、工程表の自動生成技術や建設ロボットなど、先端技術を実務レベルで活用するための基盤の役割となることを目指す。加えて、建設業界で用いられる工程情報や作業情報といったデータの標準化にも取り組む。