米OpenAI(オープンAI)は4月15日、日本法人のOpenAI Japanを設立し、同日から東京での事業活動を開始したことを発表した。3月までアマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン(AWSジャパン)でトップを務めた長崎忠雄氏が社長に就任し、国内での生成AIビジネスの立ち上げを指揮する。企業での先進的な活用事例の創出に注力するほか、政府との関係も強化していく考え。あわせて、日本語に特化した「GPT-4」のカスタムモデルを提供することも明らかにした。
(日高 彰)
米OpenAI ブラッド・ライトキャップ COO
オープンAIは米国以外には英ロンドンとアイルランドのダブリンにオフィスを置いている。日本法人はアジアで初めての拠点で英語圏以外でも初となる。設立の背景について、米国本社から来日したブラッド・ライトキャップCOO(最高執行責任者)は「日本にはテクノロジー・リーダーシップの豊かな伝統があり、またわれわれにとって重要な市場である」と述べ、日本の企業や研究機関との協業による技術開発の推進と、日本のユーザーに向けた生成AIの導入の加速が目的であると説明した。
日本市場進出の“本気度”を示す取り組みとして、大規模言語モデルのGPT-4を日本語に最適化させたカスタムモデルの開発を紹介した。日本企業の業務での活用を想定したモデルで、現在は一部の先行ユーザー向けに限定して提供しており、今後数カ月以内にAPI経由で広く利用可能になる予定。現在の最上位製品の「GPT-4 Turbo」と比べても、日本語のテキストを3倍の速度で処理できるという。
また、本社渉外担当のアナ・マカンジュ・バイスプレジデントは、2023年のG7広島サミットで、生成AI政策の国際的な議論の枠組みとなる「広島AIプロセス」が立ち上がったことや、与党自民党がプロジェクトチームを設置してAI戦略を「AIホワイトペーパー2024」として取りまとめたことに繰り返し触れ、AIの社会実装を政府が主導していることを評価。人口減少や高齢化の課題先進国である日本で生成AIによる社会課題解決に取り組むとともに、AIをめぐる制度設計などでも政府の動きと足並みをそろえていく方針だ。
OpenAI Japan 長崎忠雄 社長
OpenAI Japanの長崎社長は、「既に多くの日本のお客様にオープンAIのツールを利用していただいている。それらがどのような使われ方をしていて、何が足りなくて、もっと使っていただくには何をしたらいいか、というところにまずは時間を使いたい」と述べ、現在は積極的な拡販よりも、国内のユーザーからのニーズの吸い上げと効果的な活用事例の蓄積に力を入れる段階との考えを示した。
オープンAIの技術は、同社に出資する米Microsoft(マイクロソフト)がクラウドサービスの「Azure OpenAI Service」としても提供している。マイクロソフトは今後2年間で約4400億円を日本に向けて投資し、クラウド基盤やAI技術の開発・導入支援を強化する方針を示している。ライトキャップCOOは日本へのオープンAIのデータセンターの設置については肯定も否定もしなかったが、日本でも技術面・営業面の両方でマイクロソフトとの協業をベースに事業を拡大する姿勢を見せた。