日本オラクルは7月9日、本年度(2025会計年度)の事業戦略説明会を開き、三澤智光社長は企業ITのレジリエンス向上に引き続き注力する方針を示した。レガシーな基幹システムに対する、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)を用いたモダナイゼーション支援をはじめとした施策を進め、国内企業の成長に貢献する。三沢社長は「基幹システムに強いこだわりをもって、日本市場を少しでも良くしたい」と話した。
三澤智光 社長
本年度の重点施策は、前年度と同じく「日本のためのクラウドを提供」「お客様のためのAIを推進」の2点を掲げた。クラウド領域に関しては、基幹システムのモダン化のほか、「Oracle Alloy」などを通じた専用クラウドの提供、ガバメントクラウドへのコミットメント、「Fusion Cloud Applications」「NetSuite」といったSaaSによる企業の経営基盤強化などに取り組む。
基幹システムに対するリスクとして、三澤社長はセキュリティーインシデントや地政学的問題、自然災害を挙げ、モダン化による適切なパッチの適用、定期的なアップグレード、ディザスターリカバリー環境の構築などによって、事業継続能力を高めることが重要と指摘。稼働後に「塩漬け」されたままのレガシー環境からの脱却が「日本経済にとって必須の考え方になる」と訴えた。
三澤社長は、OCI上で構築されるVMwareベースの仮想化基盤サービスにも言及。米Broadcom(ブロードコム)による米VMware(ヴイエムウェア)買収で不安視されている価格面の問題に対して「複数年で価格を固定する制度を提供する」と述べ、パートナーとの協業によるオンプレミスのVMware環境のクラウド移行推進に意欲をみせた。
AI領域では、GPUを搭載したベアメタルインスタンスを中核に、RoCEネットワーク、HPCストレージなどで構成するクラウド基盤「OCI Supercluster」の提供、ベクトル検索に対応するデータベースシステム「Oracle Database 23ai AI Vector Search」に代表されるAIソリューションの展開などを推進する。GPUについては、東京、大阪の両リージョンに「(1)万に近い」(三澤社長)数が設置されるとした。
(藤岡 堯)