日本オラクルは2月14日、都内でイベント「Data&AI Forum」を開催し、同社の生成AIに関する戦略を説明した。生成AIによる業務効率化や生産性の向上といった価値を最大化するために、データベース(DB)の領域で強みを発揮し、企業が保有する独自のデータを生成AIが参照できる仕組みを構築することで、回答精度を高めるとした。また、ユーザー企業が業務に合わせて最適な大規模言語モデル(LLM)を選択できるようにする方針を示した。
イベントに登壇した専務執行役員の竹爪慎治・クラウド事業統括は、「これまで蓄積してきたスケーラビリティやセキュリティなどを備えたエンタープライズレベルの要求に応えるシステムを必要に応じて拡張するのが、当社の生成AIに関するアプローチの特徴の一つ」と説明。具体的には「Oracle Database 23c」にベクトル検索を対応させた「AI Vector Search」を紹介した。これにより、非構造化データを含む、さまざまなデータを類似性に基づいて検索できるようになり、生成AIからデータを活用しやすくなる。
竹爪慎治・専務執行役員
加えて、ベクトルDBを技術要素とした、外部データを参照して生成AIに回答させる技術「Retrieval Augmented Generation」(RAG)により、各ユーザー企業の業務内容に応じて回答精度を上げることができる。
三澤智光社長
イベントの中で三澤智光社長は、「先進的に生成AIを活用する顧客と会話すると、外部データの構築は必要不可欠だという声を聞く。今後はRAGの活用も一般的になるだろう。当社は、ベクトルDBのパフォーマンスなどの改善に力を入れ、課題を取り払っていく」と力を込めた。
顧客の業務内容に合わせて利用するLLMを選べるマルチLLM戦略を推進する考えも示した。同社は1月、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)のエンタープライズ向け生成AIサービス「OCI Generative AI」を発表。ユーザーはカナダのCohere(コヒア)と米Meta(メタ)のLLMを選択し、アプリケーションに統合できる。今後は、業界特化型のLLMに対応していく方針。竹爪専務執行役員は「すべての領域をカバーする万能のLLMというのは現実的ではない。大規模なLLMでリソースを使うのではなく、目的特化型を適材適所で使うことで、経済的な合理性やサービス提供のスピードでメリットが得られる」と述べた。
国内企業の生成AIの活用に向けて、パートナーとの連携に力を入れる。竹爪専務執行役員は、「顧客の業務変革に対してAIを活用していくような、上流から関われるパートナーの存在が重要」とした上で、「必要なデータソースの準備や、顧客の業務に合わせて最適なLLMの選択、セキュリティのリスクやAIが倫理的な問題を引き起こさないようにするなど、付加価値の高い貢献をしてほしい」と期待を示した。(大畑直悠)