ワークスアプリケーションズは、大企業向けに提供してきたグループウェア「ArielAirOne(アリエルエアーワン)」シリーズの、中小企業向けバージョンを今秋をめどに発売する。「買ったその日から使えるようにする」(執行役員の池亀佑亮・Ariel事業本部本部長)をコンセプトに、機能を一部限定して提供する。中小企業向けの業務アプリケーションやSaaSを提供しているソフト開発ベンダー向けのOEMを主な販売チャネルとして想定している。
(安藤章司)
(右から)池亀佑亮執行役員、小林俊輔氏、甲州創部長
ArielAirOneシリーズでは、グループウェアと連携するローコード開発ツールを使って、ユーザーが個別の業務アプリや独自のワークフローを設計できるなどカスタマイズ性を確保してきたが、中小企業向けのバージョンではノンカスタマイズですぐに使える手軽さを重視した製品に改修する。
Ariel事業本部製品開発部の甲州創・部長は「これまでに培ってきたグループウェアの充実した標準機能は役立つ」とする一方、業務アプリやワークフローをローコードで開発できるツールなどは極力省略する考えを示す。大企業向けでは、グループウェアの標準機能の部分をカスタマイズなしで使えるよう、ユーザーからの要望が多い要件を保守料金の範囲内で随時実装してきたことから、グループウェアの標準機能については、中小企業ユーザーの需要を十分カバーできるとみる。
納入先の規模については、従業員数の下限を従来の1000人から100人に引き下げ、販売ターゲットの裾野を広げていく。提供方式は、大企業向けでは客先にサーバーを設置するオンプレミス型と個別ホスティング型のいずれかを選べたが、中小企業向けではSaaS方式を主軸にする。
販路も大きく変える予定だ。現在は直販とSIerなどを経由した間接販売をメインとしているが、中小企業向けでは、業務アプリやSaaSを販売するソフト開発ベンダーへのOEMをメインに据える。
中小企業向けに展開する前準備として、6月末までにオープンソースソフトウェアのデータベース「PostgreSQL」にも対応できるよう改修し、Ariel事業本部製品開発部の小林俊輔氏は「マルチデータベース対応によって、コスト重視でデータベースを選択できるようになった」と説明。コスト競争力を高めるとともに、仕切り価格を下げられる余地を確保することで商談に弾みをつける方針だ。
大企業向けでは、ユーザーの要望を標準機能に随時取り入れる製品コンセプトとローコード開発による柔軟性の高さが評価され、従業員数2000~3000人の大手企業を中心に100社余りに納入してきた。間接販売チャネルの開拓を積極的に進めており、直近の商談件数ベースでは間接販売の比率が半分まで高まっている。新しく中小企業への導入を広げることで、向こう3年でシリーズ全体の累計ライセンス販売数の倍増を目指す。