テラスカイは11月7日、年次カンファレンス「TerraSkyDay2025」を開催した。基調講演には佐藤秀哉社長のほかにNTTデータの鈴木正範社長らが登壇し、AI分野での連携を打ち出した。グループで取り組む量子技術に関する最新の動向も説明した。
テラスカイの佐藤秀哉社長(左)とNTTデータの鈴木正範社長
「NTT DATA Salesforce Hub」を設立
NTTデータとテラスカイは米Salesforce(セールスフォース)製品の事業強化に向けて2024年4月に資本業務提携し、25年4月には「NTT DATA Salesforce Hub」の立ち上げを発表した。28年までに5000人規模のリソースプールを確立し、需要拡大が見込まれる生成AIとセールスフォース製品の導入、活用の体制を整えるとしている。
NTTデータの鈴木社長は、業界特化のシステム開発など培ってきたインダストリーコンサルティング力を生かすと説明。まずは金融業界に注力しており、「かなり成果が出ている」とし、公共や法人への展開にも意欲を見せた。
NTTデータ 鈴木正範社長
グーグル・クラウド・ジャパンからは、9月まで約6年間日本代表を務めた平手智行・Google Cloud バイスプレジデント(VP)兼エグゼクティブアドバイザーが登壇した。「引き続き、日本のAI活用、AIエージェントの活用に取り組ませていただく」とあいさつした。
グーグル・クラウド・ジャパン
平手智行・Google Cloud VP兼エグゼクティブアドバイザー
10月に発表したプラットフォーム「Gemini Enterprise」について「効率的で網羅性の高いエージェントの活用を早期に実現する」と紹介し、AIエージェントを設計、作成、実行する機能を説明。アクセス権限などの観点からエージェントを運用するプラットフォームが必要だと解説した。テラスカイとの連携について同社の「mitoco AI」などを挙げ、「先進のソリューションを一緒に提供し、お客様の課題に寄り添ったかたちで、解決策を探求する伴走者でありたい」と述べた。
日本能率協会マネジメントセンターの張士洛社長は社内システム改革について語った。「組織改革をやっていかないと、システムを変えても成果は生まれない」として四つの主力事業群を1つに再編し、テラスカイなどの支援を受けて内製化に取り組んでいるとした。
日本能率協会マネジメントセンター 張 士洛社長
Quemix、5年以内に量子超越へ
量子コンピューターの話題では、テラスカイのソフトウェア開発子会社のQuemixの松下雄一郎社長と、東芝の島田太郎社長が登場した。
Quemixは、従来のコンピューターの性能を超える量子超越の実現を5年以内に目指す。松下社長は、量子化学計算、CAE(コンピューター支援エンジニアリング)計算、AI・機械学習の3領域で、実機を用いた実験を通じて技術開発を加速していると説明した。
Quemix 松下雄一郎社長
量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)代表理事も務める東芝の島田社長は、「2030年までに人口の10%(1000万人)が、量子技術を意識せずに使える時代をつくる」「量子技術による生産額を50兆円規模にする」「量子ユニコーンベンチャー企業を創出する」という目標を披露した。Q-STARには137社が参画し、ユースケースの創出、テストベッドの整備、標準アーキテクチャーの策定を進める。「世界に先駆け、AIやGPUとのハイブリッドなどさまざまな手段を使い、価値を絞り出す」と語った。
東芝 島田太郎社長