アイレットは、企業の生成AI活用を支援する統合ソリューション群「gaipack」（Generative AI Pack＝ジーエーアイパック）の提供を開始した。レガシーシステムのモダナイゼーションや新規開発、コンサルティング、セキュリティーなど16種のサービスで構成し、AI導入に関する課題に幅広く応える。発表に合わせ週刊BCNの取材に応じた齋藤将平会長は、gaipackを通じてAIによるシステム・アプリケーション開発の領域をさらに伸長するとし「クラウドベンダーとしてだけでなく、『開発』の部分でも大手SIerと肩を並べるようになりたい」と意欲を示した。
（藤岡 堯）
 
　gaipackは、企業のAI活用を一気通貫でサポートするソリューション群となる。開発や運用・保守だけでなく、リスキリング、テストサービス、請求代行、MCP・RAG構築など多様なサービスで構成する。特定のサービスを選ぶことも可能で、齋藤会長は「必要な部分に、必要なサービスを組み合わせて使っていただきたい」と話す。アイレットはAIマネジメントの国際規格である「ISO/IEC 42001」を取得しており、サービスの安全性を担保するとともに、規格に基づく「AIセキュリティコンサルティング」も展開する。メニューはニーズに応じて増やす予定だ。

　足元では、大企業を中心に老朽化したシステムのモダナイゼーションが喫緊の課題となる中で、多額のコストや移行期間の長期化、業務が止まるリスクなどがハードルとなっている。これらに対し、AIの活用が大きな効果を発揮すると齋藤会長はみる。AIで古いシステムを設計書や要件定義ベースで解析し、新たな設計書とそれに基づくコードの生成、必要なテスト工程の提示、マニュアル作成までも自動化できるほか、過去の設計書と実際のソースコードに乖離がある場合でも修正しやすく、開発期間の短縮やコスト削減に大きな効果があるとする。

　新規開発においては、数十億円、数百億円規模の大掛かりな案件であっても、高品質かつ短期間でのリリースが実現できると齋藤会長は指摘する。ビジネスアプリケーションの今後に関して「SaaSではなく、自分たちの業務に合ったソリューションをAIでつくり、業務自体もAIに学習させることで『AIDX』が可能になる」と展望し、gaipackによって、顧客の実態に応じたソリューション開発をより充実させる考えを示す。

　国内企業のクラウドシフトでもAIによるアプリケーション開発が生きると考えている。企業のクラウド移行を阻害する要因はサーバーなどのインフラレイヤーだけでなく、アプリケーションにもあるからだ。齋藤会長は「この部分を変革できるのがgaipack」だと語る。

　顧客ターゲットについては、企業規模を問わず需要を取り込みたいとするが、KDDIグループとしての資本力や信頼性、クラウドインフラ、AI双方のセキュリティーへの知見も踏まえ「最初から大手を思い切って狙っていく」方針だ。齋藤会長は「大手の企業が勇気を出していただければ、われわれと世界を変えられる」と自信を見せる。

　gaipackの拡大に向けては、地方のSIerとのパートナーリングも想定している。一般的な協業のかたちだけではなく、gaipackのサービスの一つである「AI副業」での参加も歓迎している。実ビジネスを通じてAIやクラウドのスキル、知見を高める機会にもなることから、齋藤会長は「地方の活性化は日本にとって重要な課題であり、ぜひ一緒に取り組みたい」と呼び掛ける。

　2025年10月で創立22年を迎えたアイレットは、CIerとしてクラウドインフラの領域を中心に成長を続けている。システム開発でも多くの実績を残しているものの、SIerとしての存在感をより高めたいとの思いがある。齋藤会長は「今まで以上に顧客に寄り添い、クラウド（インフラ）もアプリケーションもどちらも手掛ける案件をもっと広げたい」とした上で「会社を設立した当初から『大手SIerに勝つ』と思っていた。大手SIerが日本のインフラを守ってきたことは理解している。ただ、われわれは新しい領域・技術に対して貪欲に挑戦するSIerとして、（業界に）くさびを打つような存在となりたいし、それにふさわしい売り上げと利益をしっかりとつくれるSIerとして認められたい」と意気込む。