NECパーソナルコンピュータ(NECPC)が群馬県太田市の群馬事業場を起点にした保守や修理を充実させている。着荷後24時間以内に修理、出荷する「工場内1日修理」を確立し、近年は故障箇所の特定や不具合の予兆検出にAIを役立てている。機械化の一方で、約650人の従業員の手が品質を支える。報道陣に公開された群馬事業場をレポートする。
(取材・文/春菜孝明)
「工場内1日修理」の達成率は目標の95%以上を維持している。同じエリアを午前は着荷、午後は出荷に切り替える動線や、OSインストールなどの作業を効率化。こうしたスピード面に加え、作業や端末外観をビデオ録画して作業品質の向上も図る。工場で故障の症状が出ない「未再現」の低減も重要で、負荷テストツールや恒温槽(0~40度)を用いたり、ブラックライトを当てて液体損傷をチェックしたりしている。
群馬事業場は1984年にNECのデスクトップPCの開発生産拠点として設立され、2002年にサービスサポート事業に転換した。長年、NECとレノボのブランドPCが運び込まれている。
蓄積した修理ナレッジは、AIによるデータ分析に活用されている。顧客の申告内容から、AIが故障している可能性の高い部品を導き出し、経験値に左右されずに迅速な対応ができる。交換部品のデータだけでなく、修理受付時点での申告も分析。特定のパターンや規則性のある不具合が、これまでより1カ月早く検出でき、フィールド対応における判断の効率化などにつながっている。
BGAの交換装置
主要な電子回路が集まるシステム(マザー)ボードの修理は細かい作業になるため、BGA(Ball Grid Array)と呼ばれる部品の交換には専用装置を導入。自動化した工程は8倍のスピードになった。機械化が進む一方、繊細な作業は人の手が支えている。
目視や手作業も欠かせない
06年まではODMベンダーに任せていたシステムボードの修理だが、07年から内製化を始め、不良は3分の1、修理期間は4分の1に減った。現在では8割の案件を取り込み、不具合データを開発部門などにフィードバックし、不具合の未然防止や品質向上に役立てている。
7500平方メートルの倉庫には1万種類以上、100万個以上の保守部品が並ぶ。修理部門からのオーダーに対して13分以内に届ける体制を構築している。全国6カ所の出張修理拠点や量販店、パートナー企業にも供給し、16時までの注文で当日発送している。販売や保証の情報、修理実績から必要数を計算して手配する任も担う。
100万個以上の部品がある倉庫
修理だけでなくライフサイクル管理(LCM)サービスの拠点でもある。端末の調達からキッティング、端末管理、廃棄をユーザーに代わって行う。最適化された独自ツールが作業を支える。ラベルの貼付には専用の治具を使い、誰でも同じ位置に貼れるように工夫。作業時はカメラで状態をチェックし、作業ミスを防止する。梱包した重量が出荷数と合致するか、バーコードで確認するシステムもある。ソフトウェアの消去時は完了画面を天井カメラで撮影し、ハードウェアはパンチャーなどで物理破壊する。
LCMサービスで使用しているツール
工場内は自律搬送ロボットが走り、エリア間の修理品の移動を担っている。25年9月頃に導入したばかりで、活動範囲を今後拡大し、搬送の自動化を進める予定だ。
工場への引き取り修理は延長オプションで最長7年まで保証。月単位で保証期間を設定できるプレミア延長保証と機器管理サービスの組み合わせで、故障連絡後、PCの到着を待たずに、マスターイメージを適用した代替機を発送する。水こぼしなどによるアクシデント・ダメージ・プロテクションには10月から、盗難を対象に加えたほか、補償限度額を撤廃した。こうした標準メニュー以外も充実させ、柔軟に対応する姿勢を打ち出す。
小林大地 執行役員
執行役員の小林大地・サービス事業本部長はセキュリティーの堅持や品質を求めて利用されているとの認識を示す。「生産や開発のノウハウを持った従業員が残っている」として、幅広い知見を生かす考えだ。