富士通は2月17日、ソフトウェア開発の全工程をAIエージェントで自動化する開発基盤「AI-Driven Software Development Platform」を公表した。カナダCohere(コヒア)と共同開発した大規模言語モデル「Takane」と富士通研究所のAIエージェント技術を活用し、複数のAIエージェントが協調して要件定義から結合テストまでを人を介入させずに実行する。4月から富士通Japanが提供する67のヘルスケア・行政向けパッケージの改修に適用する予定で、2026年度中には他分野への拡大を図る。顧客やパートナー企業への基盤提供も計画し、社会全体におけるシステム開発プロセスの変革につなげたい考えだ。
(藤岡 堯)
基盤はAIによる既存システムの理解と自動改修を目的に構築された。ヘルスケア・行政領域に焦点を当てたのは、法律や制度の変更が定期的かつ高頻度で実施されており、短期間での対応や変更要求によるシステムの大規模・複雑化、改修期間の不足といった課題が顧客の負担になっているとみたからだ。
富士通の岡田英人・本部長(左)と
富士通Japanの國分出・本部長
同日の説明会で富士通Japan特定プロジェクト対策本部の國分出・本部長は基盤の技術要素として▽AIによる法令文書の理解と要件定義の自動生成▽ベテランエンジニアの思考を再現してハルシネーションを抑制する四層構造の品質管理「Multi-layer Quality Control」▽前工程を終えたエージェントが次工程を自動起動し、失敗時には原因調査から再修正までを自動で実行する自律型・リレー型アーキテクチャー─の三つを挙げた。
結合テスト完了後には熟練エンジニアが精査して品質を担保する。実証実験では、従来の手法で3人月を要した改修が4時間に短縮された例もあったという。
富士通AI戦略・ビジネス開発本部の岡田英人・本部長は「AI-Ready Engineering」と呼ぶ事前準備によって品質を高めていると説明した。設計ルールの整理、正解データの準備、自動ビルド・テストといった実行環境の整備など、AIがシステムを正しく理解し、信頼性のある自動化を実行するために必要な「仕込み」に当たるという。開発においては、整備済みの資産を投入しても想定通りに動かないケースが多く発生し、暗黙知の形式化とフィッティングを何度も繰り返すことで精度を高めた。
AI活用によって、人月を基準としたビジネスは大きく変わると想定される。岡田本部長は「AIが自律的に開発を走らせ、システムを継続的に進化し続ける。そのスピードと適応力、これが新しい価値になる」と説明。その上で、基盤の外販や導入ノウハウの提供、コミュニティー活動などを展開し、自社にとどまらず、国内外のITベンダーやユーザー企業を巻き込んで新たな成長モデルを創出したい考えだ。
人月単価に代わるビジネスモデルに関して岡田本部長は、技術使用料のようなかたちで基本料金を設定し、これを超える分は従量制とするイメージを紹介。國分本部長は制度改正に伴うシステム改修の迅速性と正確性に価値を見いだす顧客は少なくないとし、これを実現できるサービス型のビジネスモデルによって商機が広がるとの見方を示した。