進化するECビジネス

<進化するECビジネス>リサイクルワン 廃棄物とリサイクル資源の電子商取引サイト

2001/12/24 16:18

 リサイクルワン(木南陽介代表取締役CEO)は、サイト上で廃棄物・リサイクル資源の電子商取引サービスを提供している。会員数は現在約450社。サイトは、産廃処理業者と排出企業をつなぐことで、取り引きの活性化を図っている。サイト運営のほかにも、リサイクル情報の提供やコンサルティングなどを手がけており、03年末までに約2000社の会員企業を獲得する構え。各業種におけるリサイクル法制化が活発になるなか、新たなビジネスチャンスを提供するサイトとして注目を集めそうだ。(佐相彰彦●取材・文)

00年8月にサービス開始、約450社の会員企業を獲得

 企業間の新規取引を実現するeマーケットプレイスが徐々に普及しつつあるなか、リサイクルワンが提供している電子商取引は、廃棄物・リサイクル資源に特化している点が特徴だ。



 サイトを立ち上げた背景として、木南代表取締役CEOは、「排出企業からのリアルタイムな処理依頼と処理企業の情報を結び、取り引きを効率化するサービスが大きなビジネスになると判断したため」としている。

 排出企業にとっては、「この処理企業がどのような方面に優れているのか」といった的確な情報を取得することが難しい状況だという。最近では、廃棄物処理法の改正で排出者責任が強化されたことにより、処理企業の選択に十分配慮しなければならず、詳しい情報を一括して収集することが重要となっている。

 また、処理企業側としては、競争が激しさを増すなか、取引先の新規開拓が難しいという。

 リサイクルワンでは、こうした現状に対応した形で、00年8月にサービスを開始。今年1月からは、有料の会員制サイトとして本格稼動させた。

 サイトは、廃棄物・リサイクル資源を排出する企業と処理企業の双方が、処理・リサイクルしたい廃棄物・リサイクル資源の種類、数量、料金などの情報を登録する。その情報をサイト上で公開し、条件にあった案件があれば、リサイクルワンが仲介した後、当事者間で契約交渉するというもの。これまで排出企業と処理企業双方が行っていた煩雑な事務処理をネットで解決する。

 排出企業のメリットは、発注業務の効率化に加え、処理企業自体の情報も検索できることだ。

 サイトでは、指定する納期や数量など条件に合致するものから、最適の処理企業を選択することが可能となっている。

 処理企業のメリットとしては、システム化された多数の新しい取引先を開拓できる点。これにより、施設の稼働率の向上と、営業事務の効率化が実現できる。

 IT化が遅れているといわれている産廃業界としては、サイトを各社のホームページ代わりに利用することで、自社でウェブサイトを立ち上げるよりも少額の費用でインターネット取引を始めることが可能となり、営業代行をネットに委託していることと同等の効果が得られることになる。

 サイトの利用価格は、排出企業と処理企業で異なる。排出企業は、廃棄物処理企業の検索が無料、リサイクル処理企業の検索が月額5000円。処理企業は、廃棄物処理やリサイクル処理に関わらず月額2万5000円。

 会員企業数は、今年12月初旬の時点で約450社。内訳は、排出企業が約300社、処理企業が約150社となっている。

 排出企業は、食品や機械、電子部品、自動車など各業種の大手が利用しており、メーカーが約6割を占めている。処理企業側では、中間処理業者が大半。成立した案件は再生紙をはじめ、廃プラスチック、再生金属、食残などさまざまだ。

コンサルティングも展開、業界での地位確立めざす

 リサイクルワンでは、電子商取引サイト以外でも事業を展開している。IT化促進を検討している排出企業と処理企業に対しては、社内システム構築や電子マニュフェスト導入などを行っている。また、環境やリサイクルに関しての経営コンサルティングや、廃棄物・リサイクル事業化のコンサルティングなども手がけている。

 なかでも注力しているのは「土壌汚染診断、測定サービス」だ。このサービスは、廃業などで土地を売却することを検討している企業や新規施設の建設を計画している企業を対象としている。

 環境省では、処理場跡地の用途変更や更地にしたうえでの売却、一定規模以上の土地所有者が処理場敷地を住宅地などに用途変更する際に、土壌調査を義務づけることを検討している。そのため、「今後、土壌調査関連サービスの需要が急速に高まってくるのではないか」とみている。

 木南代表取締役CEOは、大学時代に環境政策論と物質環境論を学んだ。大学卒業後はマッキンゼーに入社し、大手通信会社や通産省のEC市場開拓プロジェクト、ファブレス半導体メーカーの新規EC事業などに携わったという。

 「もともと、環境に興味があったことと、マッキンゼーでの経営ノウハウを生かしてリサイクルワンを立ち上げた」としている。

 今後の廃棄物・リサイクル処理市場については、「さまざまな法律の施行により多くの企業が参入し、今後ますます大きな市場へと成長していく。そのなかで、インターネットを通じて新しいルートを形成することが重要になってくる」と分析している。

 将来的には、「『環境に関しては、リサイクルワン』といわれるような会社を目指す」と意気込む。

 まずは、営業活動の強化と会員企業の拡大を図る。会員企業は、引き続き全国的に募集していくことで03年末までに排出企業2000社の確保を見込んでおり、処理企業で1000社の会員獲得を狙う。
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外部リンク

http://www.recycle1.com/