The Project

<The Project ―キヤノン IXYデジタル 開発現場の風景―>第8回(最終回) 3位争いに絡む

2002/01/28 16:18

週刊BCN 2002年01月28日vol.926掲載

多機種展開も本格化

 IXY DIGITALの後継機開発にあたっては、高品位デザイン、超コンパクト、簡単操作という基本コンセプトを踏襲。「さらなる高画質・高機能を追求したIXY DIGITAL200、それに光学3倍ズームを搭載した上位機300の2モデル開発する」(中里三武郎副部長)ことにした。画素数は211万画素にして、高画質・高機能に向けては「一から見直し」(同)て開発にあたった。

 「言葉でいえば画質の向上、低消費電力化、より簡単な操作の追求などになるが、たとえば低消費電力化では同じリチウム電池を使いながら40%の効率アップを実現した。そのために回路、機構部品すべてを見直し、開発し直した」(茶谷雅彦室長)という。

 前回触れた原色フィルターの採用とそれに伴う新映像エンジンの開発などに取り組む一方、目玉的機能として光学3倍ズームにチャレンジした。

 「レンズはカメラの命」(中里副部長)だが、「デジカメでいう光学3倍ズームというのは、フィルムカメラでいえば35-105mmズームに相当する。これを超小型化するというのは大変な課題だが、10円玉サイズで実現した」(茶谷室長)。

4強横一線に並ぶ

 こうしてちょうど1年で新世代機を発売したが、BCNランキングをもとに2001年のデジカメのシェアを月ベースで見ると、2001年は、富士写真フイルム、オリンパス光学工業、キヤノン、ソニーの4強がまさに死闘を繰り広げた1年となった。2000年時点ではトップ独走を固めかに見えた富士写真フイルムが、3月には26.2%にまでシェアを高めたが、その後は長期低落傾向を示し、結局12月は19.8%で終わった。 12月時点のほか3社のシェアはオリンパス16.6%、キヤノン16.2%、ソニー15.0%だ。金額ベースで見ると、また少し違い、ソニー、キヤノンが富士写真、オリンパスを追い抜く勢いを見せている。要するに4社は横一線に並んでいる状態に入ったといってよい。

 「数年でトップシェア奪取」というのは御手洗冨士夫社長の宣言だが、2年目のこの実績についてキヤノン販売の森本一成課長は、「モデル数を考えれば、3位争いに絡めたので上出来だろう」と淡々と語る。

 モデル数というのは、ほか3社の場合、流通している機種が20を超すのに対し、キヤノンの場合、多機種展開はようやく昨年後半から動き出していることをさす。「上下への多機種展開は当然考えている」(中里副部長)としていたが、昨年10月にはPowerShotS40/S30を製品化するなど、PowerShotシリーズのライン強化も本格化してきた。安定したトップシェアを確保するためには、それなりのモデル数を揃えることは絶対条件となるが、一方で流通在庫の増大というリスクも抱えることになる。モデル数を増やしながら、流通在庫負担をいかに減らしていくか。今年はキヤノングループにとっても大きな課題として浮上してくることになりそうである。
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