視点

攻勢姿勢強めるIBM

2002/02/04 16:41

週刊BCN 2002年02月04日vol.927掲載

 93年大幅赤字に苦しむIBMトップとして、異業種ナビスコから招かれたルイス・ガースナー氏は今年3月末に退任し、後任は同社のサム・パルミザーノ社長と目される。パルミザーノ社長はIBM生え抜きで日本IBM専務も経験し、とくにIBMがハード志向からサービス重点に転身した際の同部門指揮者として、見事にガースナー戦略を開花させたことが高く評価された。ガースナー氏は、じっくりと長期間かけてIBMを世界でも突出した規模のサービス会社に育て上げた。eビジネスも自ら提唱し、業界に巨大新市場を誕生させた。ガースナー経営哲学は緩やかで継続的変革を求める「プラトー(高原)型」に集約される。

 これに対しパルミザーノ氏は「世界のIT業界で最も攻撃的ビジネスマン」として恐れられたこともある。IBM出身者が多いEMCにストレージで引き離された時、彼はガースナー氏に次のように言ったと噂された。「IBM出身者の後ろ足で砂をかけられっぱなしのIBMを黙って見ているわけにはいかない。自分がストレージ部門トップになってEMCを攻撃する」パルミザーノ氏はITサービス、ストレージで好業績を上げ、最近はUNIXサーバーのサン追い上げに熱弁をふるう。同氏はガースナーCEOの前任者ジョン・エイカーズ氏のアシスタントとしても仕え、伝統的IBM社風とガースナー流儀の両方の戦略を学んだ。このパルミザーノ氏はガースナー時代に培ってきたIBM技術で再度、IT市場の技術的席巻に挑むと米業界では考えられている。

 Linuxのエンタープライズ普及によって、ウィンドウズやサンのハイエンド市場への参入を阻止すること、そしてUNIXでサンとのシェア逆転が初目標になろう。2002年も米IT市場は厳しさが続く。しかしIBMは、売上高・利益伸張を止めることはできない。そのためパルミザーノIBMは2つの攻撃を市場で仕掛けると考える米アナリストは多い。1つはHP、コンパック、サンのエンタープライズユーザーのリプレース戦略だ。第2は伸びの小さい米市場に頼らずに海外ビジネスを一挙に拡大することだ。海外でとくにIBMの売上高が大きく伸びているのは日本市場だ。02年以降国内市場がIBM攻勢によって国内メーカーも奮起し、活性化することも期待される。
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