The Project

<The Project ―KDDI egnavigation 開発現場の風景―>第8回(最終回) 「GPSケータイ」の誕生

2002/03/25 16:18

●位置情報を味付け

 「コミュニケーション系」――。

 それが、楠直樹たちの出した方向性だった。

 携帯電話を使ったサービスでは、通話に加えて、知り合いなどと、「いま、どこにいる?」、「何している?」といった情報のやりとりが動機付けとなって利用されることが多い。

 そこにGPS機能を付加すれば、「どこにいるか」という欲求に、さらに違った角度から応えることができるだろう、との見通しだ。

 この結論をもとに、7月31日、サービス提供業者への説明会を開催した。

 参集したのは約20社。担当のモバイルインターネットビジネス部のメンバーは、彼らを前に、こう切り出した。

 「GPSoneはコミュニケーションツールのひとつです」

 業者側は意外そうな面持ちだったが、こう続けた。

 「コミュニケーションというのは、こうです。従来、位置情報というと、短絡的に地図サービスに結びつけてしまいますが、そういった思考にとらわれるのではなく、ゲームなど、各社それぞれの得意分野に位置情報を取り込んでください。位置情報に特化するのではなく、うまく味付けとして使っていただければと思っています」

 8月下旬を期限として、各事業者にアイデアを練ってもらうことにした。

 「基本的な方針はお伝えしたので、あとは、モチはモチ屋。自由に考えてください」

 そんな言葉を受け、最終的に60もの企画が集まった。

 それを、詳細な仕様、利用者からの視点をもとに絞り込んでいく。KDDI側では、まだ継続していた実地試験の結果に基づいて仕様を詰めており、電話機メーカー側でも、その動きに歩調を合わせて製品開発を進めていった。

●冠に「EZ」を

 9月に入ると、販売企画部門ではサービス名称の検討に入った。

 「7月に第1弾として始めたジャバ対応が『EZプラス』だから、冠に『EZ』は必要だろう」

 「じゃあ、基地局と電波をやり取りする方式の今の位置情報サービスと同じ名称でいいんじゃないか」

 そんな議論があって、後者の意見――「EZナビゲーション」に落ち着いた。

 相前後して9月初旬、KDDIの小野寺正社長が報道陣を前に、EZナビゲーションを「12月に始める」と明言。

 いよいよラストスパートに入った。

 その12月が近くなると、上層部から、「端末側に、『EZナビゲーションができるのは、この電話機です』と連想できるような名称がほしいな」と求められ、電話機に「GPSケータイ」と名づけることも決まった。

 そのころ、コンテンツ開発チームは、両手に新端末をもち、動作や表示文言の確認などに追われた。徹夜もあった。

 そうした努力とともに、12月1日、サービス開始。楠は、振り返る。

 「これが終わりではありません。スタートです」(終わり)(文中敬称略)
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