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<OVER VIEW>IT市場減速下の米メーカー決算分析 Chapter4

2002/03/25 16:18

 世界のUNIXサーバー市場は、eビジネスの中核はUNIXという認識が定着してから、UNIX専業のサンの独走が長く続いた。しかし米国には多数のドットコム企業誕生やeビジネスへの過剰期待によるITブームの訪れと、そのバブル崩壊が短期間内に起こった。このバブルの訪れと崩壊の影響をもろに受けたのがサンであり、その決算書がその経過を裏付ける。サンのピークは00年10-12月で、業績低迷の底はわずか9か月後に起きた。サンの業績が今後も低迷し続けるのか、徐々に回復に向かうのか、現時点で予測するのは難しい。

急上昇から急落、サンの業績

●急上昇から急降下したサンの業績推移

 米国市場におけるITバブル、そしてこのバブルが弾けたことによって引き起こされたIT不況の実態を、UNIXサーバーのトップメーカーであるサンの決算が実証する。サンの主力市場は通信会社、金融などの伝統企業とドットコム企業群、そしてドットコム対象の新興ITサービスであった。

 00年後半から数多くのドットコムが倒産や買収によって市場から退出した。また、新興通信会社、ドットコム企業を対象にしたエクソダスなど新興ITサービス企業もドットコムの崩壊によって相次いで倒産に追い込まれた。

 伝統的通信会社もバンドウィズ(回線帯域)の需要下降局面に入ったため、IT設備投資を01年に大幅削減した。ドットコムや新興通信・ITサービスの誕生、そして急激な倒産発生というITバブルとその崩壊がサン決算書から読み取ることができる。サンの売上高や営業損益はITバブル期に急上昇し、その崩壊期には急激に下降した(Figure19)。

 バブル最盛期の00年春から四半期単位でサンの売上高は50億ドルを越えた。しかし、市場の冷え込みによって急激に下降し、01年7-9月には30億ドルを下回った。これにともなって営業損益も巨額黒字から大幅赤字へと急変した。

 00年4-6月には9億1500万ドルであった営業利益は、01年10-12月には7億7600万ドルの営業赤字となった。サン業績が欧州の名峰マッターホルンのように急上昇から急下降へ転じた状況は、同社の四半期単位売上高前年同期比が実証する(Figure20)。

 サン売上高の前年同期比は99年春より増大し、20%増から30%、40%増と急激な右肩上がり状況となって、ピーク時の00年7-9月には60%を越えた。しかしバブル崩壊で直ちに急激な下降局面に突入し、01年春から20%減となって7-9月には43.3%減まで落ちた。

 IBMのルイス・ガースナー会長はサンとは名指ししなかったものの、「売上高の急上昇企業には必ず明確な要因があり、この要因がなくなると急激な下落となるのは当然だ」と評した。

●業績低迷とともに総利益率急落

 サンは世界のUNIXサーバーで独走状態であったため、好業績時には50%以上と世界のコンピュータメーカーのなかでは圧倒的に高い売上高総利益率を誇った。この当時、IBMの同率は36-37%程度であった。サン総利益率ピーク時は52%台であった(Figure21)。

 しかし売上高がピークの00年7-9月にこの高かった利益率は下がり始め、売上高の下降とともに急激な率の低下となった。01年夏以降は36%まで下がり、ピーク時とは16ポイント近い差ができた。

 サンの総利益率推移は同社売上高営業損益率推移と完全に連動した。ピーク時には18%以上であった同率は、01年4-6月から営業赤字となってマイナスに転じ、01年10-12月にはマイナス24.6%まで下がった。このサンの赤字決算は売上高減少にともなって、総利益率が急速に下がったためだ。

 とくにサンのUNIXサーバーはローエンドで、ウィンドウズ、Linuxベースのインテルサーバーとの競合が激しくなり、これが総利益率低落に拍車をかけた。

 またハイエンドではIBMが新鋭機「レガッタ」を投入して、サン総利益率にプレッシャーをかけている。サン業績の低迷は売上高のみでなく、受注高、四半期末受注残高の低落も端的にこれを裏付ける(Figure22)。

 00年4-6月の受注高は56億ドルを越え、期末受注残高は18億ドルを越えていた。しかし受注の下降とともに受注残高も大きく下がり始め、01年7-9月の受注の底となった時点で受注残高も前年同期比61.5%減となった。

 01年10-12月には受注の回復とともに、受注残高も若干上昇に転じている。サンは売上高の極端な下降とともに、総利益率、受注高、受注残高も大きな低落となっている。

 サンが大幅赤字から短期的に脱却できるには、先行指標である受注残高がどのように回復するかがポイントになる。それと同時にサンの総利益率がどこまで回復するかも注目点だ。

 しかしサン最盛期とは異なって、ハイエンドではIBM、ローエンドではLinuxサーバーという強敵が出現しているので、簡単には総利益率の回復はできないだろう。そうなると、01年7-12月の売上高の低迷期に15.1%という異常に高い研究開発費率をどう下げるかも、サン経営陣に問われることになる。

 サンはこれまでプロセッサからOSまでを自社開発してきた唯一の垂直統合メーカーであったが、研究開発費率の低減を求められると、このアーキテクチャ戦略の転向も強制されることになる。

●日本でも低迷、サービス構成比も低い

 サン業績の低迷はIT投資不況の意味合いが強かった米国だけでなく、サーバー市場が堅調であった日本国内市場でも大きく売上高を落としていることも影響しているのだろう。

 サンの日本市場での売上高は、ピーク時には四半期で4億9600ドルであったが01年後半には3億ドルを切るまでに落ちている(Figure23)。

 01年10-12月の国内市場売上高前年同期比は32.2%減となった。国内UNIXサーバー市場では、米国メーカーとともにサン互換の富士通が力をつけていることが、サンシェアに大きな影響を与えていると考えられる。国内ではHPのUNIXサーバーも金融市場で強い力を保持している。

 また、サンの経営上の問題点としては、全売上高に対するITサービス構成比が低いことが指摘できる。サンはサービス売上高が伸びているからではなく、製品売上高が大きく落ち込んだため自動的にサービス構成比が伸びている。

 01年10-12月ITサービス売上高は前年同期比6.2%増であるが、製品売上高は47.6%減となったため、サービス構成比は17.7%となっている。

 しかし年間ベースで見ると、ITサービスで突出した規模を誇るIBMとの比較では、サンのサービス構成比は大きく劣っている(Figure24)。

 サンのサービス構成比が製品売上高が伸びに転じても向上するには、サンのパートナー依存の問題、OEM販売重点という販売戦略の転換も要求されることになる。
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