大航海時代

<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第36話 過去を抹殺せよ

2002/06/10 16:18

週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載

水野博之 高知工科大学 副学長

 最近の新聞の伝えるところによると、IT産業における韓国の優勢は日に日にはっきりしてきているという。エレクトロニクス業界の業績は史上空前のものであると言われるし、町にはIT喫茶店という世界のどこにもないような仕組みが氾濫している。これは、韓国では新しい発想が生まれれば、たちどころにやってみることができるということだ。全く米国流であり、シリコンバレー風だ。どこかの国のように、何をやるにも認可、認可制で「お上」に伺いを立てないといけない国とは大違いだ。

 こんなことを書くと、「規制なんて何もしていませんよ。やろうと思えばできるはずですよ」という言葉が返ってくるが、できるはず、と自由にできるとは雲泥の差があることを心得ないといけない。韓国も、かつて日本以上にタテ社会国家であった。長幼の序列が厳しく、ヨコへの連携がなかなか難しい国であった。このような国が、ここ10年ほどで驚くべき変化を遂げたのである。我々も大いに学ばんといかんだろう。韓国はいまや、数百年に渡る長き伝統をかなぐり捨てようとしている。「過去にこだわるな。過去を忘れろ」から、いまや、「過去を抹殺せよ」とまで言われるようになった。

 韓国では、前の政権は必ずと言ってよいほど次の政権では糾弾される。いろいろな問題が暴かれ、人々もまた葬られていく。現政権も終わりに近づくにつれてその様相が濃くなってきた。一部には「もう少し寛容でいたい」という意見もあるが、このような在り方は「過去を過去として次の時代に移る」ためには最も有効な手段であるに違いない。このような韓国の裂ぱくとでも言うべき果断さに比して、我が国の改革のなんたる遅れよ、と言わざるを得ない。チンタラ、チンタラ一体、やる気がある人かね。(仁川国際空港にて)
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