e-Japan最前線

<e-Japan最前線>41. ITビジネスモデル地区構想 全国8地区でチャレンジ

2003/04/21 16:18

週刊BCN 2003年04月21日vol.987掲載

 総務省は、特定の地方公共団体を対象としてITのハード・ソフトの施策を集中的に展開することで地域経済活性化を推進する「ITビジネスモデル地区構想」を今年度から3か年計画で推進する。(千葉利宏)

 今月4日付で全国8地区(表参照)を指定し、インフラ整備、研究開発助成、人材育成などの支援措置を優先的に展開していく。各地方公共団体の地域特性とITビジネスの集積を結び付けることで、経済活性化のための新しいビジネスモデルを生み出すのが狙いだ。


 総務省  ITビジネスモデル構想は、昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」に盛り込まれたもので、今年1月にモデル地区指定のための公募が実施されていた。公募には全国22の地方公共団体が応募、そのなかから「地域の特性に応じ、それぞれに特徴のある地区が選ばれた」(山碕良志・総務省情報通信政策局地域通信振興課課長補佐)。 

 では、指定8地区を大きく5つに類型化している。1番目の類型は「ポテンシャル型」で、これに当てはまるのが仙台市と大阪市。仙台市は東北大学や宮城大学などITに強い大学が集積しており、このポテンシャルを生かしてITビジネスの育成を図る。大阪市も、製造業が集積した都心部と研究開発機能の集積を進めている臨海部を連携することでITビジネスの活性化を進める構想だ。

 2番目は「アウトソーシング型」。該当するのは岐阜県大垣市と神奈川県横須賀市。大垣市には岐阜県などの行政主導で90年代からIT集積団地「ソフトピアジャパン」の整備を進め、電子自治体の拠点となるデータセンターも設置するなどITビジネス育成が図られてきた。横須賀市も、電子自治体などで最先端を行く自治体として評価も高く、アウトソーシングにも積極的に取り組んでいる。

 3番目は「リゾート型」。和歌山県の白浜町・田辺市と、宮崎県宮崎市・清武町。今年1月のBCN紙面に和歌山県の木村良樹知事に登場していただいたが、空き家となった企業の保養施設なども活用して魅力的なITビジネス環境を構築しようという試みに挑戦する。01年2月にリゾート法指定第1号だった宮崎シーガイアの経営破たんを経験した宮崎県が、豊かなリゾート環境をITビジネス育成にどう生かすかも興味深い。

 4番目は「ユビキタス型」の岡山市。IPv6対応ネットワーク基盤とICタグの活用で、岡山市内にユビキタス社会のモデル構築を目指す。最後の5番目は「ハブ型」で、北九州市、福岡市、飯塚市の3市が対象。30-50キロも距離の離れた3市を、毎秒2.4ギガビットの「ふくおかギガビットハイウェイ」で結び、仮想的な一体のITハブと位置づけてIT産業の集積を図ろうという構想だ。

 指定8地区のなかで注目したいのは大阪市だ。IT分野での積極的な取り組みで有名な岐阜県、岡山県、横須賀市などに対して、大阪市はITで注目されたという話をあまり聞いたことがない。それだけに大阪市がポテンシャルの高い経済基盤を生かしてITビジネスをどのように育成するかが関心を集めそうだ。

 今回指定された8地区では3年かけて地域経済活性化のためのビジネスモデル構築にチャレンジする。「リゾート型」や「ハブ型」で優れたビジネスモデルが開発できれば、他の地方自治体にとっても大いに参考になるだろう。総務省では、今年度から本格的に「共同アウトソーシング・電子自治体推進戦略」にも取り組むことにしているが、同戦略の狙いのひとつもIT関連地場産業の育成である。

 IT産業全体の発展のためにも、税制を含めて全ての施策を総合して取り組むべき課題だろう。
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