OVER VIEW

<OVER VIEW>長引くIT不況の国内ハイテク決算総括 Chapter6

2003/07/07 16:18

週刊BCN 2003年07月07日vol.997掲載

 わが国の非メーカー系ソリューションプロバイダには売上高が8000億円を超えるNTTデータという巨大企業が存在する。さらに非メーカー系ではCSK、大塚商会、伊藤忠テクノサイエンス、富士ソフトABCという売上高1000億円超のプロバイダもある。2003年3月決算で、これらプロバイダの多くはIT投資抑制の影響で減収基調だった。わが国ソリューションプロバイダで注目すべきは総利益率48%、営業利益率26%というきわめて高利益率のオービックだ。IT不況下であっても同社利益体質は揺らいでいない。(中野英嗣)

独立系ソリューションプロバイダ03年3月期決算

■売り上げ減少が目立ち、有価証券評価損が影響

photo IT不況の影響を受けて、NTTデータなど、特定メーカー系列でない有力独立系ソリューションベンダーでも、02年度決算は減収、最終損益の減益企業が目立つ。

 増収はNTTデータ4%、富士ソフトABC18%、オービック1%にとどまり、減収はCSK16%、大塚商会1%、伊藤忠テクノサイエンス(CTC)16%、住商エレクトロニクス7%であった(Figure31、32)。

 売り上げ減少にはユーザーのIT投資抑制と価格デフレによるハード価格下落が大きく影響している。NTTデータは売上高が8321億円という、規模突出のわが国最大のソリューションプロバイダである。

photo CSKは当年度に、アスキーおよびCSKエレクトロニクスの経営権移行で連結除外となったため、売上高が16%減少した。大塚商会はハード売上比重が高いにもかかわらず、1%台の減収にとどまり、営業損益も2%台の微減であった。

 CTCはサン・マイクロシステムズの世界的不振の影響もあって、16%の減収となった。富士ソフトABCは02年3月の40%という大幅増収に続き、当年度も18%の増収となった。しかし、売上総利益率が02年3月の23%から18%と4ポイント近く減少し、さらに販管費が13%増えたため、営業損益で18%の減益となった。さらに有価証券評価損が28億円となったため、純損益で57%減益となった。

 住商エレクトロニクスは投資抑制によるクライアント/サーバー機器やテレコム向け通信機器売上減によって7%の減収、営業損益も79%という大幅減益となった。

 わが国有力ソリューションプロバイダで利益率最高のオービック売上高は1%台の微増で、営業損益も12%増益だったが、有価証券評価損の26億円によって、純損益で14%の減益となった。有力ソリューションベンダーは多額の有価証券をもつため、03年3月の株価下落が最終損益に大きく影響した。

■他社を圧倒するオービックの高い利益率

photo 米IBMグローバルサービスと独立系プロバイダの総利益率、税引前利益率を比較すると、オービックを除くベンダー総利益はIBMとほぼ並ぶが、税引前利益率では3ポイント以上の差がある(Figure33)。

 しかし、オービックの利益率は総利益が48%、税引前が20%といずれもIBMの2倍だ。同社は高利益の理由を説明しないが、同社セグメント情報によると、売上高265億円のシステムインテグレーション営業利益率は25%、また売上高89億円のシステムサポートは41%というきわめて高い営業利益率だ。

 同社はシステムサポート事業について、システム新規構築ニーズが高く、そのネットワークサポートと運用支援サービスが伸長した、と説明する。

 オービックが標榜する経営戦略は「ワンストップサービスソリューション」である。顧客との接点を1本化し、導入コンサルティングからシステム構築、運用、情報提供まで一貫体制でトータルにサポートしている。さらにオービックは、エンタープライズ向け統合業務ソフトウェア「OBIC7ex」では会計システムを中心に幅広い需要があり、さらに「金融ソリューション」の不動産担保評価システムの需要が堅調だったと説明する。

 またオービック決算で注目したいのは期末受注残高である。02年3月の同社システムインテグレーション残高は120億円で、これが当年度にすべて売上計上されたとしても、年度内受注売上比率は55%ときわめて高い。同社高利益のポイントは、受注から売り上げまでのサイクルがきわめて短いことだと指摘できるだろう。一方、システムサポート前年残高の当年売上比は75%と高い。これは同社の優良顧客基盤が強いことを物語る。

■NTTデータはさらに売上高伸長「たのめーる」が順調な大塚商会

photo 売上高8321億円の巨大プロバイダであるNTTデータは、主力のインテグレーション、ネットワークサービスともに3-5%の売上高伸長であった(Figure34)。

 とくに同社の主力セグメントのインテグレーション事業の営業利益率は10%と高い。これに関し同社は「テレコム関連から受注したシステムが完成したこと、および販管費抑制もあって増収増益になった」と説明する。

 またネットワークサービスの増収増益に関しては、「クレジットカード、デビットカードのインフラであるCAFISおよび回線リセールビジネスが順調に推移した」と説明する。NTTデータは04年3月期売上高8400億円(前年度比0.9%増)、純利益300億円(同5%増)との見通しを発表している。

photo 大塚商会セグメントでは、システムインテグレーションが減収増益、サポート&サービスは増収増益であったが、いずれも営業利益は微増にとどまった(Figure35)。

 同社インテグレーションの中核ソフトはERPの「SMILEα」およびウェブ対応「SMILEie」である。当セグメント当年売上高はユーザー投資抑制により5%減となった。

 またサポート&サービスでは「たのめーる」が順調で、またセキュリティビジネスも加わって、7%の増収となった。04年3月期は4%増収の3385億円の売上高を予想する。CTCは自社売上高のハード・ソフト・ITサービスや主要製品別比率を公表している(Figure36)。

photo 01年3月に売上比64%のハードは03年3月には50%まで大きく下がり、ノンハードと並んだ。ノンハード比率の伸びは、ハード売上減も大きな要因だ。しかし、ソリューションベンダーでは、ハードの売上増や粗利益増には大きく期待できないため、ITサービス比が伸びることは評価される。

 さらに同社主要品別比率ではサンが01年3月の30%から03年3月には15%と半減している。サンは世界的に売上高を大きく減らし、02年6月決算売上高は前年比32%減で、日本は最も大きく減少し、前年比減少率は38%であった。

 CTCはサンの国内最大販社であるので、サン国内売上高低迷の影響を直接的に受けた。しかし、CTCの強味は世界有力ブランドのサン、シスコ、オラクルで、それぞれ高い国内販売シェアをもっていることだ。
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