“一技の長”を探る システム構築ビジネス争奪戦

<“一技の長”を探る>13.TKC(下)

2003/07/14 20:43

週刊BCN 2003年07月14日vol.998掲載

 今、TKCが力を入れているのがLGWAN-ASPだ。LGWANとは、地方自治体の庁内LANを相互に接続した総合行政ネットワークである。このネットワークを使ってASP(業務ソフトの期間貸し)を提供するのがLGWAN-ASPである。

LGWAN-ASP市場の開拓に注力

 総務省によれば、現時点でLGWAN-ASPサービスを提供している事業者はないものの、受付窓口である外郭団体の地方自治情報センターには、複数の事業者がすでに申請を済ませているという。

 TKCでも、LGWANを利用した市町村向けASPサービスを提供するため、すでにLGWANとTKCのデータセンターとの接続に向けた申請を始めている。角一幸・専務取締役は「自治体向けのASPサービスでは、当社が最も進んでいる分野で実績もある」と、意欲を示す。

 ここに来て、急にLGWAN-ASPに対する機運が高まってきた背景には、LGWANへの接続数急増が挙げられる。現在、LGWANと接続している地方自治体の数は約900団体。昨年度末(2003年3月)と比較して一気に500団体も増えた。全国約3000団体の自治体は、今年度中にも、原則として全てが加入する見込み。

 総務省自治行政局地域情報政策室の高島史郎・地域情報化係長は「接続する自治体が急増したことで、民間事業者にとっての採算性も高まった。民間によるASPサービスを自治体が利用するかどうかは、サービス内容や営業努力によるものの、今の状況を見る限り、今年度上期中には、なんらかの民間によるLGWAN-ASPサービスが始まる」という。

 TKCでは、電子自治体の目玉である電子申請や電子受付などの中核的な情報システムを全国の市町村に向けてASP方式で提供する方針だ。

 だが一方で、「LGWAN-ASP型の利用は、どちらかと言えば電車の経路検索やウイルス駆除など汎用的なサービスが中心になるのではないか。ウイルス駆除など全国3000団体で利用すれば、ボリュームディスカウントなど価格面で安く抑えられる利点が大きい」(総務省)との指摘もある。

 電子申請など中核的なシステムがLGWAN-ASPで集約されると、東京の大手事業者に案件が集中してしまうという懸念が自治体側にはある。電子申請などのLGWAN-ASPを利用する自治体が少ないと、規模の利点が得られなくなり、民間事業者の側の採算が合わなくなる。このあたりのバランスを、どう取るのかが課題となりそうだ。(安藤章司)
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