中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>29.SARS終息で原状復帰始まる

2003/07/28 20:43

週刊BCN 2003年07月28日vol.1000掲載

 SARSの終息宣言が発表されて1か月、日本と中国のソフト産業にどのような影響が出ているのかを急遽、現地から検証したい。(坂口正憲)

 7月中旬、上海から現地入りして驚いたのは、ほぼ“通常”に戻っている点である。まず、上海・浦東空港には世界各国からの旅行客が訪れていたが、当然のようにマスクは着用しておらず、緊張感も感じられない。街に出かけても、SARSがもたらした影響はうかがえるが、市民生活はほとんど以前通り。レストランの洗面所には、きちんと消毒液が設置されるようになったが、市民が神経質にそれを利用しているわけでもない。

 そうした中で、日本企業の中国ビジネスは急激に再開しているようだ。ある大手機械製造の関係者は、「7月以降、会社としても中国への渡航を認めるというより、ビジネスの遅れを取り返すため積極的に出張するよう奨励している」と話す。上海の中心街では、35度を超す酷暑のなかでも、スーツ姿で走り回る日本人ビジネスマンの姿を以前のように多く見かける。6月末、世界保険機関(WHO)からSARSの終息宣言が発表された途端、SARS関連の報道はめっきり減り、強力な磁力で結び付く日中間のビジネスは原状復帰しつつある。

 そして、日系ソフト会社の中国への業務アウトソーシング、対中投資(ビジネス開発)の流れも元の方向に戻りつつある。上海でソフト関連会社を営む中国人経営者は、「SARSの影響で、当てにしていた日系企業のプロジェクトから外された。人材確保に先行投資した分、資金的にも厳しかった。ただ、この1か月で別の日系企業から2件の案件を獲得できたので、当面は何とかしのげそうだ」と話す。SARSの影響で、ビジネスに数か月の停滞があった分、日系ソフト会社の中国ビジネスも活況を見せている。「7月以降、開発能力をオーバーした注文が入っており、現地の協力会社に仕事を割り振るので大変だ」(中国に開発拠点をもつ中堅ソフト会社)。中国では日系、欧米系の大手製造業の大型情報投資が目白押し。SARS終息を受けて、それらが一気に動き出しそうな気配も見せる。
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