視点

スパム、スパム、スパム

2003/12/01 16:41

週刊BCN 2003年12月01日vol.1017掲載

 GBDe総会が11月6日に米ニューヨークで開催された。ブロードバンドやRFIDが脚光を浴び、ユビキタス社会の到来が迫っていることを各国のCEOや政府代表者が確認し合い、明るい雰囲気であった。提言書には2001年東京宣言に重ねて「迷惑メール撲滅問題」が取り上げられたが、なぜスパムメールが再登場するのか、昼食会で話題になった。

 SPAMとは「Spiced Ham」の略で、加工豚肉の商標である。レストランでウェイトレスが客に「スパム、スパム、スパム」と連発して注文を強要する。また、食品売場で店員が「スパム、スパム、スパム」と連呼して缶詰を押しつける。こういうコメディがあったことから「客にとって迷惑」という意味が生まれたという。法律的にはunsolicited e-mail(求められていないeメール)と表現されることが多い。確かに求められていないeメールは受信者にとって「迷惑」である。しかし商業広告であっても興味を引かれるものもある。やはり法益は他にもあるのではないか。

 欧米のeメールの使用総回線中スパムメールの割合は60%で、その内40%程度が詐欺か非倫理的誘引行為だという。これが米国で大変な危機感を生み、スパム常習者に政府当局やISP(インターネットサービスプロバイダ)が訴訟を提起したり、長期の禁固刑を課すことができる法律が上院で可決された。欧州はEU指令に基づき各国が立法を行っているが、懸念事項は非道徳的・非倫理的商行為だという。

 日本では00年から2年をかけて議論され「特定電子メール送信適正化法」が制定された。スパム対策では最も進んだ国であろう。もちろん、民間業者の自主的な対策も重要だ。大量のバルクメールが特定サーバーから送信されてきた場合、多くのISPでは相手サーバーに通知して受信を止める。また加入者の要望により未承諾広告のオプトアウトもできる。

 結局、法益はトラフィックやサーバーという公共のリソースを守る権利があるということであろう。日本で議論が進んだのは、多くの携帯電話加入者がeメールの世界に参加したためである。そして被害を受けた携帯電話業者はアドレスの初期設定を英数字組合せに変更するなどさまざまな対策を講じてきた。しかし、ISPの渡り歩きや国外サーバーを利用する悪質な業者は絶えない。しかし欧米でも携帯電話の使い方が日本同様に進化するにつれ、日本の対策・努力を参考にする日は近いと思う。
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