大航海時代

<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第112話(最終回) 空元気が大切

2003/12/22 16:18

週刊BCN 2003年12月22日vol.1020掲載

水野博之 高知工科大学総合研究所所長

 昔から日本では「えびす信仰」が盛んである。えびすさんというのは商売の神様である。あのニコニコ顔で商売の神様とは?といぶかるむきもあるが、商売というのは陽気でないといけない、ということを示している。インイン・ウツウツは商売には向かない。空元気が大切なのである。「商売繁盛、笹もって来い」とわめきながら、笹にぶら下がったもろもろのものをかついで帰る。福の神をかついで家のなかに持ってこようというのである。

 そんなに簡単に福の神がやってくるもんか、というのは、現代の感覚であって、そんな小ざかしいことを言っているうちに福の神は逃げてしまう。エビスさんの横には弁天さんがいるのが常であって、これは女性の神様である。商売と女性がひっついているのがミソであって、古くから商売と女性は不可分と考えられていた証拠である。さて、エビスさんとベンテンさんの前でパンパンと柏手を奉げ、5円銅貨をおひねりにして賽銭箱にほうりこみ叫ぶのである。

 「エビスさん、ベンテンさん、大いに賽銭はずんどきましたぜ。御縁をおくんなさいよ」。この辺りからすでに商売は始まっているわけで、エビスさんを言いくるめられるくらいでないと、商売の達人とはいえないことを示している。これに対してエビスさん、ベンテンさんが何と答えるか、その年々によって異なることになる。よければよいで翌年はまた御縁を頂きに行くし、悪ければ悪いで、今度は神社の裏にまわり、「エビスさん、ベンテンさん、去年はどうもワテのこと忘れはったんと違いまっか。今年こそ忘れんよう頼みまっせ。うまいこと今年がまわったら、来年はたんとお礼しまっせ」とささやくのである。こうして年始めがはじまる。今年も、来年もエビスさんは休む暇もない。笑っているほかない。(京都粟田神社にて)
  • 1