WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第200回 インテル、チャネル重視戦略へ

2004/04/26 16:04

週刊BCN 2004年04月26日vol.1037掲載

 世界的にパソコン出荷は回復軌道にあるが、インテルはこれまでのようにデルやヒューレット・パッカード(HP)などパソコンやIAサーバーのベンダーだけではなく、インテルから半導体を購入してシステムを組み立てるSP(ソリューションプロバイダ)ルート拡大を基本戦略の1つとする。同社のポール・オテリーニ社長もチャネル戦略について次のように述べる。「インテルはデジタルホームからエンタープライズまで、新しい市場でSPを重視する戦略に転換する。今後は、大ベンダーが対応できないさまざまな顧客需要を感知し、製品やサービスを供給する機能を備えることが重要になる。とくに、SPはインテルの新技術を早い時期に採用する顧客に対し、迅速に対応できる」

仕切り値格差に不満の声

 同社長は具体的に、「2007年までに北米市場でSP経由ビジネスを現在の2倍、30億ドル(3300億円)まで増やす」と戦略目標を明らかにし、04年がインテルにとってチャネル戦略重視に転換する絶好の機会だと次のようにいう。「コンピュータ、通信、AV(音響・映像)の融合は、インテル市場の急速な拡大を示唆している。例えば、デジタルホームは大ベンダーが手がけるテレビ、DVDレコーダーとともに顧客から固有のさまざまな要求が出てくる。これまでのITとは異質の技術をもってSPがデジタルホーム需要に立ち向かうチャンスが訪れ、インテルはこの動きをサポートしなければならない」

 インテルは、同社SPパートナーに、単にインテル部品を組み込んだ製品の組み立てだけではなく、これから注目されるワイヤレスサービスなどにもSPが参入して、新たに発生する顧客需要を積極的に拾い上げることも狙っている。このため、インテルは、同社4万5000社のSPが参加できる通信会社スプリントのワイヤレスサービスの再販契約も締結した。もちろん、当面インテルがSPに期待するのはホワイトボックスのパソコン、IAサーバーだ。とくにホワイトボックスパソコンでは多くのSPがより安いAMDチップを採用している。このためインテルは今後、Centrino(セントリーノ)を載せるホワイトボックスノートに期待している。

 インテルチャネルのなかには、同社64ビットItanium(アイタニウム)プロセッサを1024個も並列搭載したスパコンを組み立て、米国立ローレンスリバモア研究所に納入した技術力を誇るSPも存在する。このSPをオテリーニ社長は、「インテルチャネルの宝だ」とたたえている。ホワイトボックスビルダーでもある多くのインテルチャネル企業は、「インテルの半導体部品やマイクロソフト製OSの、デルなど量販ベンダーとの大きな仕切り価格格差が最大の不満だ」と述べている。あるインテルSP幹部は、「当社がインテルから買うXeon(ジーオン)はデルより40%高く、さらにマイクロソフトオフィスなどライセンスもデルに比べ2倍高い。インテルがチャネル重視戦略を採るなら、マイクロソフトも含めてこの大きな仕切り格差をまず解決すべき」と語る。(中野英嗣●文)

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